火星と木星の間にある小惑星帯の中に隠れるように、金属を豊富に含んだある天体が浮かんでいる。「プシケ」というその小惑星は、望遠鏡の画像には明るい点としてしか写らず、本当の姿は誰も見たことがない。それは単なる岩石と金属の塊なのかもしれないし、あるいは凍りついた黄色い溶岩の川や、空に向かってくねくねと延びて冷え固まった鉄など、この世ならぬ風変わりな地形に彩られた場所なのかもしれない。
科学者らは、プシケが「非常に奇妙な何か」であることを期待していると、この小惑星を探査する新しい「サイキ」(プシケの英語読み)ミッションのプロジェクト・マネージャーである、米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所(JPL)のヘンリー・ストーン氏は言う。
プシケを目指す探査機サイキは、10月13日に米フロリダ州にあるNASAケネディ宇宙センターから、スペースX社のロケット「ファルコンヘビー」によって打ち上げられる予定だ。探査機はそこから、壮大な太陽系の旅を開始し、2029年に謎めいた金属の小惑星プシケにたどり着く。
「プシケがどんな見た目をしているのかはわかっていません」と、米ワシントン大学の惑星科学者ポール・バーン氏は言う。「現場に到達したとき、何を見ることになるのかは誰にもわからないのです」
米アリゾナ州立大学とNASAジェット推進研究所が主導するこのミッションは、金属が豊富な小惑星を人類が探査する初めての機会であり、太陽系が形成される過程をより深く理解する助けとなる。しかし現在のところ、プシケが存在するという事実を除けば、プシケに関するあらゆることが謎に包まれている。
「プシケがわれわれを大いに驚かせてくれることを期待しています」と、ミッションの主任科学者で、アリゾナ州立大学の惑星科学者であるリンディー・エルキンズ・タントン氏は言う。
小惑星帯の変わり種
小惑星帯には、大きく分けて3つのタイプの小惑星がある。石のような性質で、金属がいくらか混ざったもの(S型)、粘土や炭素を含む物質でできた岩石質のもの(C型)、そして、金属を非常に多く含むと考えられるもの(M型)だ。小惑星帯にある小惑星のうち、M型が占める割合はおよそ8%に過ぎない。この希少かつ興味深いM型の小惑星を探査した例はない。
広いところで幅約280キロのプシケは1852年、イタリア人天文学者アンニーバレ・デ・ガスパリスによって発見された。ガスパリスはこの小惑星に、ギリシャの心の女神にちなんでプシケと名付けた。数十年前、科学者らはその明るさから、プシケはM型小惑星であり、多くの鉄のほか、ニッケルが少し含まれていると推測した。
「プシケにレーダービームを当てると、ゴツゴツとした岩ではなく、金属の鏡にでも当たったかのようにすごい勢いで戻ってくるのです」と語るのは、ミッションの副主任研究者を務めるアリゾナ州立大学の惑星科学者ジム・ベル氏だ。また、プシケやその付近にある小惑星の軌道のわずかな変化は、プシケが非常に高密度であることを示唆している。もしかすると当初考えられていた通り、プシケはほぼ完全に金属でできているのかもしれない。
もしそうなら、プシケはM型小惑星の基準に照らしても常識はずれの奇妙な天体ということになり、科学者たちはその起源についてさまざまな推測を巡らせている。
たとえば、プシケは惑星になりそこねた天体の金属のコア(核)が露出したものだ、という興味深い説がある。岩石質の惑星が形成されるとき、金属などの密度の高い物質は、内側に沈んでいってコアをつくる。
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