系外惑星に生物由来の物質か、新種の海洋惑星の可能性も濃厚に

太陽系外惑星「K2-18 b」の大気に示唆する証拠、「まさに大発見の瞬間」

2023.09.21
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科学データに基づいて描かれた太陽系外惑星K2-18 bのイラスト。新たな観測により、メタンや二酸化炭素など、炭素を含む分子の存在が明らかになった。こうした気体が豊富にあることとアンモニアが少ないことは、K2-18 bの大気の下には水の海があるという仮説を補強している。(ILLUSTRATION BY NASA, CSA, ESA, J. OLMSTED (STSCI), SCIENCE: N. MADHUSUDHAN (CAMBRIDGE UNIVERSITY))
科学データに基づいて描かれた太陽系外惑星K2-18 bのイラスト。新たな観測により、メタンや二酸化炭素など、炭素を含む分子の存在が明らかになった。こうした気体が豊富にあることとアンモニアが少ないことは、K2-18 bの大気の下には水の海があるという仮説を補強している。(ILLUSTRATION BY NASA, CSA, ESA, J. OLMSTED (STSCI), SCIENCE: N. MADHUSUDHAN (CAMBRIDGE UNIVERSITY))
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「K2-18 b」と呼ばれる遠い惑星の大気の詳細が、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)によって行われた最近の観測で明らかになった。論文は2023年9月11日に査読前の論文を投稿するサーバー「arXiv」で公開された。

 ヨーロッパの研究チームによる分析からは、大気にはメタンと二酸化炭素が豊富で、アンモニアはほとんど存在していないと判明した。この組成は、地球から約120光年の距離にあるK2-18 bが、これまでは理論上の存在でしかなかった「ハイセアン惑星」という種類の海洋惑星である可能性を示唆している。

 K2-18 bはその主星に対して、生命の存在が可能だとされる適切な距離に位置している。また、新たな分析では、この惑星の大気中に硫化ジメチル(ジメチルスルフィド)という物質も存在する可能性が示唆されている。硫化ジメチルは地球上では生命によって作られる物質だ。今後の観測では、この物質が本当にK2-18 bに存在するのかを確認する作業が行われ、もし存在が確認された場合は、発生源として生物以外の可能性を除外する追加作業が必要となるだろう。

 たとえ生命が存在しなかったとしても、K2-18 bは、地球より大きく海王星より小さい、まったく新しい種類の惑星について詳しく知る機会を提供してくれる。英ケンブリッジ大学の天文学者であり、論文の筆頭著者であるニック・マドゥスダン氏は以前より、こうした惑星には大気の下に液体の海を持つ可能性があるという説を唱えている。

 K2-18 bに水素だけでなく、メタンも存在し、さらにはアンモニアがほとんどないと示すデータを見たときのことを、マドゥスダン氏はよく覚えている。研究では、K2-18 bのような大きな惑星がこうした比率の気体を持てるのは、大気とその下にある水との間で相互作用が起こっている場合のみであることが示唆されている。(参考記事:「系外惑星で水を確認 暑すぎない大気で生命存在も」

「われわれは10年間、こうした低温の大気にメタンが含まれていないか探してきましたが、最初のトランジット(主星面通過)観測で見つかりました。まさに大発見の瞬間でした」と氏は言う。

 2021年、マドゥスダン氏はこうした水の多い惑星を表すハイセアン惑星という名称を提唱した。水素(hydrogen)と海(ocean)を組み合わせた言葉だ。太陽系にはない興味深い存在であるハイセアン惑星にはまた、研究対象として好都合な点もある。岩石惑星よりも大きいため、宇宙望遠鏡の遠隔センサーで観測しやすいのだ。

 K2-18 bは2時間半かけて、しし座にある主星「K2-18」の前を通過する。ウェッブ望遠鏡は、2023年1月と6月の2回、それぞれ約5時間かけてこの惑星のトランジットを観測した。望遠鏡に搭載されている機器は、惑星の大気を通ってくる主星の光をとらえ、そこに含まれている物質を特定する手がかりを天文学者に提供した。

 100億ドルを費やして打ち上げられたウェッブ望遠鏡は、遠い惑星を調査する道具としての価値を着々と証明している。マドゥスダン氏によると、ウェッブ望遠鏡で5時間のトランジット観測を1回行えば、ハッブル宇宙望遠鏡で何年もかけて8回観測する分をすべて合わせたよりも多くのデータが得られるという。「まさに革命的な性能です」と氏は言う。(参考記事:「史上最古の超巨大ブラックホールを検出、続々と判明する初期宇宙」

生命はどこに

 太陽系外惑星で地球外生命体を探す研究者には、主に2つのグループがある。地球のような岩石惑星で見つかると考えるグループと、海に覆われた惑星を調査するグループだ。今回の研究により、海洋惑星の候補について新たな手がかりが得られた。

 またウェッブ望遠鏡は、すでに岩石惑星の調査にも活用されている。太陽系に近い地球サイズの惑星「トラピスト1 b」と「トラピスト1 c」をウェッブ望遠鏡で観測した結果、どちらもおそらく大気を持たないむき出しの岩石で、生命が存在する可能性は低いと明らかになった。両惑星の主星「トラピスト1」は低温の矮星で、フレアを発生させることが知られている。これらの発見は、こうした環境の岩石惑星が生物にとって適切ではないかもしれないと示唆している。(参考記事:「【解説】地球に似た7惑星を発見、生命に理想的」

「これを測定できるというのは驚くべきことです」と、トラピスト1星系を研究した科学者たちの一人である、ドイツ、マックス・プランク天文学研究所のローラ・クライドバーグ氏は述べている。「岩石惑星が大気を保持できるかどうかについては、これまで何十年にもわたって議論されてきました。優秀なウェッブ望遠鏡のおかげで、太陽系外惑星系とわれわれの太陽系を、これまでにない方法で比較できる体制がようやく整ったのです」

次ページ:地球外生命体を探すうえで非常に適した候補

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