英国初の黒人王妃? シャーロットの実像に迫る

Netflix新作の主人公として、新たな関心を集める

2023.05.20
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
スコットランドの画家アラン・ラムゼーが描いたシャーロット王妃の肖像画。この戴冠式の衣装が、シャーロットは英国初の黒人王妃だったかどうかという疑問を呼び、数世紀が経過した今も議論が続いている。(IMAGE VIA ART COLLECTION / ALAMY STOCK PHOTO)
スコットランドの画家アラン・ラムゼーが描いたシャーロット王妃の肖像画。この戴冠式の衣装が、シャーロットは英国初の黒人王妃だったかどうかという疑問を呼び、数世紀が経過した今も議論が続いている。(IMAGE VIA ART COLLECTION / ALAMY STOCK PHOTO)
[画像のクリックで拡大表示]

 1761年、メクレンブルク=シュトレーリッツ公国の公女である17歳のソフィア・シャーロットは、自宅となるロンドンの宮殿を一目見て青ざめた。数時間後にグレートブリテンおよびアイルランド王国の王妃になることが決まっていたが、シャーロットは英国に足を踏み入れたことも、夫となる人に会ったこともなかった。

 その後に起きたことは、英国王室の歴史そのものだ。そして、英国を支配することを運命づけられ、英国初の黒人王妃になったとも噂される内気なドイツの少女の人生を題材にした全6話から成るNetflixの新作ドラマ「クイーン・シャーロット〜ブリジャートン家外伝〜」のテーマでもある。さて、本物のシャーロット王妃はどのような人物だったのだろう?(参考記事:「エリザベス2世、思わぬ運命で英女王になるまで」

シャーロットが英国王妃になるまで

 1744年、現在のドイツ北部に存在したメクレンブルク=シュトレーリッツ公国に生まれたシャーロットは、何の変哲もない幼少時代を過ごした。この地をヨーロッパの貴族たちは平凡な田舎と考えていた。しかし、ある遠い国の王子が王になったとき、このことが若きシャーロットに有利に働くこととなる。

 1760年、ジョージ3世の祖父が死去し、ジョージ3世が王位を継承した。そして、王が未婚であることが懸念材料となった。ジョージ3世には妻が必要だ。しかも、早急に。顧問たちはそう考え、ジョージ3世と人生をともにし、跡継ぎを生んでくれるプロテスタントの王女を必死に探した。

 シャーロットは無名で、政治的なつながりも目的もない存在と考えられていた。これは、国王の結婚後も英国の利益が優先されることを望んでいたジョージ3世の政治顧問たちにとって好都合だった。ジョージ3世はシャーロットに会ったことすらなかったが、1761年、使者が代理で結婚を申し込んだ。シャーロットはこれを受け入れ、若き王女が英国に到着してわずか6時間後、結婚式が執り行われた。(参考記事:「白いドレスの起源、英王室ウェディング」

 こうして、英語を話すこともできず、結婚式の当日まで夫に会ったこともなかったシャーロットが、グレートブリテンおよびアイルランド王国の王妃となった。新しい王と王妃にあいさつしようと、戴冠式には大勢の人が詰めかけた。行列の最後尾がウェストミンスター寺院に入るまでに2時間を要したほどだ。やがて、第一子の娘が誕生した。シャーロットはその後、長い結婚生活の間に15人の子どもを産むことになる。

シャーロットとジョージ3世は愛し合っていた?

 誰に聞いても、王と王妃はとても幸せな結婚生活を送り、ジョージ3世は献身的な父親、そして夫だったようだ。しかし、シャーロットにとって、宮廷生活は困難なものだった。英国貴族のしきたりを巡って義母と衝突し、多くの跡継ぎを生むことへの期待に疲れ果ててしまったのだ。14人目の子どもを産むころには、「私がこの重荷から解放されたいと願うよりも、囚人が自由を切に願っているとはとても思えない」と嘆いている。(参考記事:「100年ぶりの大発見 数奇な人生を歩んだメアリーの暗号を解く」

 シャーロットは宮廷生活の退屈さと窮屈さに苦しみながらも、自身の新たな役割への期待に応える方法を見いだした。結婚の翌年、ジョージ3世はシャーロットに、バッキンガム公が所有する広大な邸宅を買い与えた。後にバッキンガム宮殿となったバッキンガムハウスは「王妃の家」と呼ばれ、シャーロットはそこで本を読んだり、裁縫したり、チェンバロを弾いたりしながら、快適な家庭生活を送った。

次ページ:シャーロットは本当に英国初の黒人王妃だったのか?

ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の
会員*のみ、ご利用いただけます。

会員* はログイン

*会員:年間購読、電子版月ぎめ、
 日経読者割引サービスをご利用中の方、ならびにWeb無料会員になります。

おすすめ関連書籍

エリザベス女王 写真で振り返る、国家に捧げた生涯

2022年9月8日に逝去した英国女王エリザベス2世の生涯を、ナショナル ジオグラフィックの秘蔵写真で振り返る。 〔全国学校図書館協議会選定図書〕〔電子版あり〕

定価:1,540円(税込)

おすすめ関連書籍

絶対に行けない世界の非公開区域99 コンパクト版

ガザの地下トンネルから女王の寝室まで

危険、非公開、軍事機密、研究施設、都市伝説……。あなたが絶対に立ち入れない場所を大公開! 〔電子版あり〕

定価:2,090円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加