コロナは感染回数が多いほど死亡率上昇、後遺症にもなりやすい

560万人超の米退役軍人の医療記録を分析、再感染について分かっていること

2022.08.02
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 デング熱は例外だ。デング熱では、過去の感染で誘導された抗体が不利に作用してしまい、ウイルスが宿主細胞に侵入するのを助けるという珍しい現象が起きる。同様のことが新型コロナウイルスにも当てはまるという証拠はない。もしそうなら、今頃は入院患者が急増しているはずだ。しかし、ウイルスがとりうる経路の1つであるこの可能性を排除することが重要だと、科学者たちは指摘する。

積み重なるダメージ

 新型コロナに感染することによって獲得した免疫とワクチン接種による免疫のどちらも時間の経過とともに弱まることは、今では明らかだ。しかし、新型コロナの再感染がどの程度重篤なものになるかについては、熱い議論が交わされてきた。

 6月にアルアリー氏の論文が発表された当初、再感染は1回目の感染よりも重症になることを示唆する研究結果だと受け止められ、SNS(交流サイト)上で騒動になった。しかし、これは誤った解釈だと氏は言う。

 とはいえ、たとえ1回目よりも軽く済むケースが大半だったとしても、再感染は深刻に受け止められるべきだと氏は言う。

「重要なのは、リスクはゼロではないということです」とアルアリー氏は言う。氏は住宅火災の消火後に例える。「配偶者に『火の消し方が分かったから、もう一度家に火をつけよう』とは言いませんよね。もしかしたら、再感染しても免疫系は対処できるかもしれません。ですが、そもそも感染しないほうがいいのです」

 アブラダッド氏もこれに同意する。2022年7月7日付けで医学誌「New England Journal of Medicine」に掲載された氏の研究によると、2回のワクチン接種に加えて新型コロナの感染歴がある場合、再感染による重症化(急性期病床入院)、重篤化(集中治療室入院)、死亡が防がれた割合は約97%に上った。つまり、再感染によるリスクは「非常に低い」と言える。しかし、感染回数が増えるたびに、新型コロナによる健康への悪影響は累積していくと氏は言う。

 アルアリー氏のような研究が増えれば、再感染がどのように新型コロナによる健康リスクを増やすのかについての理解を深めるのに役立つだろうと、オスターホルム氏は言う。例えば、感染によって血管に長期的な炎症が起こり、それが血栓の発生につながることで、心臓発作や脳卒中のリスクが高まる可能性があると氏は指摘する。

新型コロナ後遺症について分かっていること

 さらに、感染するたびに新型コロナ後遺症を発症するリスクがあることも、科学者にとって心配な点だ。感染後、様々な症状が数カ月から数年続きうる新型コロナ後遺症の原因はいまだ不明だが、科学者らは免疫によって後遺症を防げるかどうかを解明したいと望んでいる。

 今までに得られた研究結果では、どちらとも言えない。2021年9月に医学誌「The Lancet Infectious Diseases」に掲載された研究では、新型コロナワクチンを2回接種した人は、未接種の人に比べて新型コロナ後遺症を発症する割合が半分であることが分かった。これは、ワクチンが後遺症の予防にある程度は役立つことを示唆する。しかし、2022年5月に医学誌「Nature Medicine」に掲載されたアルアリー氏の研究では、ワクチンを接種していても後遺症の発症リスクが約15%しか下がらないことが示唆されている。

次ページ:なぜ回数が多いと後遺症になりやすいのか

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