ネパールのトラ保護区のひとつ、バルディア国立公園の浅瀬を歩くベンガルトラ。(PHOTOGRAPH BY UTOPIA_88, GETTY IMAGES)
ネパールのトラ保護区のひとつ、バルディア国立公園の浅瀬を歩くベンガルトラ。(PHOTOGRAPH BY UTOPIA_88, GETTY IMAGES)
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 ネパールが、トラ保護の首位を独走している。

 7月29日、ネパールは絶滅危惧種であるトラが国内に355頭いることを確認したと発表した。2009年の推定数121頭から約3倍に増えたことになる。(参考記事:「動物大図鑑:ベンガルトラ」

 2010年にロシアで開かれた世界トラ保護会議「トラサミット」では、野生のトラが生息する13カ国すべてが頭数を倍に増やす目標に合意した。ネパールだけがこれを達成した。

 成功の主な要因は、トラの保護に「政府が自ら積極的に取り組む姿勢を示し」、厳しい密猟取り締まり政策を実施していることだと話すのは、野生ネコ科動物の保護団体「パンセラ」のトラ部副部長アビシェック・ハリハル氏だ。パンセラは、ネパール政府による最近のベンガルトラの生息頭数調査を支援している。

 パンセラによると、20世紀初頭には10万頭を超すトラが地球を歩き回っていたが、生息地の消失によってその90%以上が失われたという。娯楽を目的に野生動物を狩猟する「トロフィーハンティング」や、毛皮や骨を狙った密猟も、トラを激減させる原因となった。

 中国をはじめとするアジアの国には、伝統的にトラの骨を漬け込んだ酒を飲めば、この動物の強さが得られると信じる人がいる。現在、カンボジア、ラオス、ベトナム、中国南部には野生のトラはいない。

 ネパールでは、トラの密猟には15年の禁錮刑と1万ドル(約130万円)の罰金が科されるとハリハル氏は説明する。

 1970年代以降、ネパールでは5つの国立公園が設立されており、トラのほとんどがこの中で生活している。公園内は職員や軍の兵士が頻繁にパトロールする。トラの保護活動は、結果的にサイ、ゾウ、センザンコウなど、ほかの絶滅が危惧される動物の保護にも寄与することになった。

 カメラトラップ(自動撮影装置)を利用するなど、確認方法の向上もネパールでトラの頭数が増えた一因ではあるが、実際の個体数や誕生数も増加しているとハリハル氏は言う。近年インドやブータン、タイでも生息数が増えているものの、「間違いなくネパールが他の国に先行して、トラを増やすという目標に近づいています」

 ネパールの発表に先立つ7月初旬、絶滅危惧動物種の状況に関する国際的権威である国際自然保護連合(IUCN)は、全世界のトラの個体群が「安定または増加している」と発表した。最新の集計は、野生のトラの数が3726頭から5578頭の間であることを示している。2015年の推定数から40%の増加だ。ただし、その多くが実数の増加ではなく、モニタリング方法の向上に起因するものだとIUCNは注意を促す。

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