米国カリフォルニア州にあるパロマー天文台。口径1.22メートルの望遠鏡に取り付けられた掃天観測施設ZTFの6億500万画素のフィールドカメラは、毎晩、全天を観測している。最近、この装置を使った観測により、常に金星軌道の内側を回っている小惑星が初めて発見された。(PHOTOGRAPH BY BILL ROSS, GETTY IMAGES)
米国カリフォルニア州にあるパロマー天文台。口径1.22メートルの望遠鏡に取り付けられた掃天観測施設ZTFの6億500万画素のフィールドカメラは、毎晩、全天を観測している。最近、この装置を使った観測により、常に金星軌道の内側を回っている小惑星が初めて発見された。(PHOTOGRAPH BY BILL ROSS, GETTY IMAGES)
[画像をタップでギャラリー表示]

 太陽系の中心をかすめ、太陽の光に隠れ、ときに地球などの岩石惑星に接近する不思議な小惑星群がある。その中でも最もよく知られているのが、2年前に発見された小惑星「アイローチャクニム(ꞌAylóꞌchaxnim) 」。米国カリフォルニア州の先住民パウマの人々の言葉で「金星の女の子」を意味する名前だ。

 アイローチャクニムは、これまで知られているなかで唯一、常に金星の公転軌道より内側にある小惑星だ。地球からは非常に見えにくい位置にあり、地球上の生命を脅かす可能性がある。(参考記事:「小惑星ベンヌ、地球に衝突する確率が上昇、なぜ?」

 天文学者は、地球の公転軌道より外側にある危険な小惑星はほとんど発見できたと考えている。しかし、地球軌道の内側にある小惑星を見つけるのは難しい。こうした小惑星は、地球から見たときに太陽の光の中にあるため、望遠鏡で見ることができないからだ。それでも近年、天文学者たちは、太陽が地平線のすぐ下にあるタイミングに小惑星のかすかな輝きを探し出すことに成功し始めている。(参考記事:「太陽系、地球周辺は小惑星で混雑」

 地球に近い軌道を回る「地球近傍小惑星」の多くは、内部太陽系(地球や火星といった岩石惑星がある太陽に近いエリア)では長生きできない。惑星と衝突したり、灼熱の太陽の犠牲になったり、外側に弾き飛ばされたりする運命にあるからだ。しかし、ほとんど研究されていないこの小惑星群の中には、危険なものもあるかもしれない。(参考記事:「地球をかすめた小惑星2011 MD」

「こうした小惑星は、ほとんどの時間を地球軌道より内側で過ごしますが、地球軌道を横切ることもあります。そのときが危険なのです」と米カーネギー科学研究所の天文学者スコット・シェパード氏は説明する。「小惑星は太陽の方向からやってくるので、地球からその接近を見ることができないのです」。シェパード氏は、7月21日付けで学術誌『サイエンス』にこれらの小惑星についての論文を発表した。

薄明時の小惑星探し

 これらの小惑星は、惑星軌道との位置関係によって分類される。常に地球軌道の内側を回る小惑星は「アティラ群」と呼ばれ、そのうち金星軌道の内側を回るものは「バティラ群」と呼ぶことが提案されている。理論的には常に水星軌道の内側を回る小惑星も存在している可能性があり、これには「バルカン群」という名前が提案されている。

[画像をタップでギャラリー表示]

 地球軌道の内側を回る小惑星を発見し、研究するためには、通常とは異なる方法をとらなければならない。地球軌道の外側を回る小惑星を探すなら夜空の最も暗い部分に望遠鏡を向ければよいが、内側を回る小惑星を探す場合は、夜明けや夕暮れ時に、太陽が隠れている地平線のすぐ上に望遠鏡を向ける。望遠鏡は10分〜20分間薄明かりを見つめ、太陽の光を反射する、小さな動く点を探す。

「太陽の近くの小惑星を観測するためにはいろいろな条件を満たしている必要があり、非常に難しいのです」とシェパード氏は言う。「観測は太陽が地平線のすぐ下にあるときに行わなければなりませんが、このときの空は非常に明るいのです。また、地平線のすぐ上に望遠鏡を向けるので、ふだんより多くの大気の中を通ってきた光を見ることになります」

 大気は画像をぼやけさせるので、小惑星のかすかな輝きを解像するのは通常よりも困難になる。さらに、天気が悪ければ、つかの間の観測の機会はすぐに消え去ってしまう。

 それでも天文学者たちは、2つの望遠鏡を駆使して小惑星を探している。シェパード氏のチームは、チリのセロ・トロロ汎米天文台のダークエネルギーカメラを、もう1つのチームは、米国のパロマー天文台にある掃天観測施設ZTFを使っている。チリの望遠鏡の口径は4メートルで、ZTFの口径1.22メートルの望遠鏡よりも大きいため、より暗い天体を見つけることができるが、視野は狭くなる。一方、ZTFの望遠鏡は毎晩全天を観測しているので、明るさが変動する天体を探しやすい。

「すばらしい観測装置です」と、ZTFチームのメンバーである米カリフォルニア工科大学のジョージ・ヘロウ氏は言う。「一晩の観測で数万から10万のアラートが出ます」と言う。「視野が非常に広いため、天候や大気の条件が良ければ、薄明の20分間にかなりの範囲の空を観測できます」

次ページ:記録破りの小惑星

ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の会員*のみ、ご利用いただけます。

会員* はログイン

*会員:年間購読、電子版月ぎめ、日経読者割引サービスをご利用中の方、ならびにWeb無料会員になります。

おすすめ関連書籍

ビジュアル 銀河大図鑑

この上なく美しく、どの本よりも詳しく、誰にでもわかりやすい。大人も子供も楽しめる、本格的な宇宙図鑑! 〔日本版25周年記念出版〕 〔全国学校図書館協議会選定図書〕

定価:6,930円(税込)

おすすめ関連書籍

COSMOS コスモス いくつもの世界

カール・セーガンが残した、世界4000万部の不朽の名著「COSMOS」。40年ぶりの続編が満を持して登場。 〔日本版25周年記念出版〕 〔全国学校図書館協議会選定図書〕

定価:2,970円(税込)