英国のスリムブリッジ湿地センターでコオロギを追うヘラシギ。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
英国のスリムブリッジ湿地センターでコオロギを追うヘラシギ。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK)
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 2022年6月16日に60歳の誕生日を迎えた写真家ジョエル・サートレイ氏は、もう一つの節目を迎えた。ナショナル ジオグラフィックの「Photo Ark(フォト・アーク、写真の箱舟)」に1万3000種目の写真を追加したのだ。(参考記事:「Photo Ark 絶滅から動物を守る撮影プロジェクト」

 サートレイ氏は、英国のスリムブリッジ湿地センターでヘラシギ(Calidris pygmaea)の写真と動画を撮影した。ヘラシギはヨーロッパとアジアの海岸に生息する鳥で、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは近絶滅種(Critically Endangered)に分類される。その名の通り“へら”のようなくちばしが特徴で、英語でもスプーンのような形状にちなんで「spoonie」という愛称で親しまれている。

 ヘラシギの飼育員は、ヘラシギが黒い板の上を歩けるように1カ月以上かけて訓練した。その際は、ごほうびとしてコオロギの幼虫を与え、ヘラシギ本来の習性をまねて黒い板を砂で覆った。

 おかげでサートレイ氏はPhoto Arkの特徴である白黒の背景でヘラシギを撮影することができた。これは、言わばすべての種を対等に撮影するためだ。

「私たちがともに地球で暮らしている動物のほとんどは、トラやゴリラ、ホッキョクグマやキリンではありません」と氏は言う。「ホシバナモグラやぜん虫、サンショウウオやカメのような小さな動物たちです。これらの動物が世界を変化させているのです。私たちはPhoto Arkによって、すべての種に平等な声を与えることができます」(参考記事:「【動画】鼻で驚きの12連打!奇妙なホシバナモグラ」

 Photo Arkは大小様々な生き物を対象とし、絶滅の危機に直面している3万5500種の動植物に焦点を当てることを目的としている。

 鳥がPhoto Arkの節目を飾るのは、1000種目に撮影されたカリフォルニアコンドルに続き、ヘラシギが2番目だ。なお、2021年11月に発表された1万2000種目は、アラビアコブラだった。(参考記事:「絶滅から動物を守る「箱舟」、1万2000種目は“新参コブラ”」

 狩猟や生息地の喪失、気候変動をはじめとする人間の活動に起因する圧力により、ヘラシギの個体数は90%減少し、野生では100〜150組の繁殖ペアが残るのみだと、米国の野生生物保護協会(WCS)のロシアプロジェクトの保護責任者であるジョナサン・スラート氏は言う。

「ヘラシギは東アジアの“炭鉱のカナリア”です。もしヘラシギが絶滅したら、他の多くの動物も絶滅するでしょう」と、氏は電子メールでナショナル ジオグラフィックに伝えた。

次ページ:ヘラシギの貴重な動画

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