ペンギンは温暖化を乗り切れない? 進化速度が鳥で最も遅かった

前例のない大規模研究で判明、現代の桁違いに速い気候変動に適応できるか疑問

2022.07.22
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
崖に立つミナミイワトビペンギン。南アフリカ、マリオン島で撮影。(PHOTOGRAPH BY THOMAS P. PESCHAK, NATGEO IMAGE COLLECTION)
崖に立つミナミイワトビペンギン。南アフリカ、マリオン島で撮影。(PHOTOGRAPH BY THOMAS P. PESCHAK, NATGEO IMAGE COLLECTION)
[画像のクリックで拡大表示]

 南極の雪山を滑り降り、極寒の海を元気に泳ぐ。ペンギンは周囲の環境に完璧に適応しているように見える。しかし、このカリスマ的な鳥は最初から飛べない海鳥だったわけではない。飛ぶ鳥から泳ぐ鳥へと進化するにあたって、まったくと言っていいほど新しい技術、体形、機能を手に入れたのだ。

 この進化をかつてない方法で描き出し、気候がペンギンの運命をどのように変えたかを検証した成果が、7月19日付で学術誌「Nature Communications」に発表された。化石記録とゲノムデータを組み合わせた、前例のない規模の研究だ。

「ペンギンは最も楽しい進化の産物です」と、米コネティカット州グリニッジにあるブルース博物館の鳥類古生物学者で、論文の著者の一人であるダニエル・セプカ氏は語る。「彼らは祖先と全く異なるボディプラン(体の基本的な構造)とライフスタイルを適合させてきました」

 論文によれば、約6600万年前の白亜紀と古第三紀の間に起きた大量絶滅の後、初期のペンギンは南半球のあちこちにできたニッチ(生態的地位)に驚くほど素早く適応したという。鳥類以外の恐竜が絶滅し、ほかの動物に繁栄の余地が生まれたため、ペンギンは南半球のさまざまな気候帯、生物群系に入り込んだ。

 ただし、この研究は同時に、ペンギンは鳥類で最も進化の速度が遅いことも明らかにした。つまり、大量絶滅後、海洋生物になってから、遺伝子の変異の速度が著しく低下している。そのため、現代の猛烈なスピードの気候変動に素早く適応できるかどうか疑問だ、と研究チームは述べている。

 ブラジル、ニュージーランド、南アフリカなど、多様な環境に暮らすペンギン18種ほどのうち、半数以上が国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅危惧種(endangered)または危急種(vulnerable)に指定されている。

「進化の速度が落ちているせいで、現代のペンギンは古代のペンギンに比べて、急激な環境変化を生き延びる能力が不足しているのかもしれません」と、ニュージーランド、カンタベリー大学の鳥類古生物学者バネッサ・デ・ピエトリ氏は話す。デ・ピエトリ氏は今回の研究に参加していない。

「ペンギンは特殊化し、自らを窮地に追い込んでしまったのでしょうか? おそらく、そうなのでしょう」

水中生活に適応、進化

 ペンギンの進化に関するこれまでの研究は、全ペンギン種の約4分の3がすでに絶滅しており、化石記録でしか語られていなかった。今回のように、完全な化石記録に加えて、現生種、最近絶滅した種すべてのゲノムを組み合わせた研究は前例がない。ニュージーランド、オタゴ大学の古生物学者ニック・ローレンス氏は、「ペンギンの進化を理解するための素晴らしいアプローチです」と第三者の立場で評価する。

 研究チームは化石記録とゲノムという2つの巨大なデータセットを組み合わせて、ペンギンの系統樹を精緻化。ペンギンが多様になった時代を特定し、個体数の変化を描き出し、水中生活への移行につながった遺伝子を突き止めた。

「本当の意味で、全体像が見えてきました」とセプカ氏は振り返る。(参考記事:「南極でペンギン150万羽を発見、衛星とAIを駆使」

次ページ:見えてきた、水中生活への進化過程

ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の
会員*のみ、ご利用いただけます。

会員* はログイン

*会員:年間購読、電子版月ぎめ、
 日経読者割引サービスをご利用中の方、ならびにWeb無料会員になります。

おすすめ関連書籍

写真家だけが知っている 動物たちの物語

世界で最も権威のある写真賞の一つ「ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー」の受賞作品のなかから、記憶に残る魅力的な作品を厳選。

定価:2,530円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加