フローレス原人がいた島の巨鳥は空を飛べた、定説覆る新発見

原人の倍ほどもある巨大コウノトリ、新発見の骨を分析

2022.07.19
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
化石の発掘現場となったインドネシア、フローレス島のリアンブア洞窟の6万年以上前の復元図。ゾウの仲間で今は絶滅したステゴドンの死骸を手に入れるため、巨大コウノトリが若いコモドオオトカゲに襲いかかっている。(ILLUSTRATION BY GABRIEL UGUETO)
化石の発掘現場となったインドネシア、フローレス島のリアンブア洞窟の6万年以上前の復元図。ゾウの仲間で今は絶滅したステゴドンの死骸を手に入れるため、巨大コウノトリが若いコモドオオトカゲに襲いかかっている。(ILLUSTRATION BY GABRIEL UGUETO)
[画像のクリックで拡大表示]

 インドネシア東部にあるフローレス島ではかつて「ホビット」サイズの人類と巨大な鳥が共存していた。6万年以上前にこの島で暮らしていた身長1メートルに満たないフローレス原人(ホモ・フロレシエンシス)にとって、高さ1.5メートル以上あった氷河時代の巨大コウノトリ、レプトプティロス・ロブスタス(Leptoptilos robustus)は見上げるような大きさだったはずだ。(参考記事:「解説:約70万年前の超小型原人発見、フローレス島」

 フローレス島の巨大コウノトリは、孤島の生態系に適応した飛べない鳥だと考えられてきた。しかし、翼の骨を含む新たな化石を分析したところ、この定説は覆された。巨体にもかかわらず、広げた幅が約3.6メートルもある翼を使って空を飛べたようだ。この論文は7月13日付けで学術誌「Royal Society Open Science」に発表された。

 今回の新たな発見によって、フローレス島のコウノトリの体の構造や行動についても従来説が再考を迫られた。かつては小動物を捕って食べていたと考えられていたが、太古の空を飛んでいた他のコウノトリや、現在もアフリカのサハラ砂漠以南で暮らすアフリカハゲコウ(Leptoptilos crumenifer)と同じく草食動物の死骸を食べる腐肉食動物だったと示唆されたのだ。しかも、腐肉食動物だったことが理由で、フローレス島のコウノトリが最終的に絶滅した可能性もある。

 フローレス島には、体高1.2メートルほどのゾウの仲間で今は絶滅したステゴドンも暮らしていた。「巨大コウノトリの主な食べ物はステゴドンでした」とノルウェー、ベルゲン大学の古生物学者で論文の筆頭著者であるハンネケ・メイエル氏は言う。餌がない限りコウノトリは立ち入らないと思われる洞窟の中で、ステゴドンの骨とコウノトリの骨が一緒に発見されているからだ。(参考記事:「実はゾウの楽園だった日本列島」

 ステゴドンが絶滅したときにフローレス島のコウノトリも絶滅したのではないかと、メイエル氏らは考えている。コモドオオトカゲをはじめ、フローレス島で哺乳類を食べていた他の動物は別の地域で生き延びている。しかし巨大コウノトリは、氷河時代末期に始まった温暖化によってフローレス島の環境が大きく変わったのとほぼ同時期に絶滅している。「ステゴドンの絶滅によって、島の生態系が崩壊したからではないかと推測しています」とメイエル氏は言う。(参考記事:「人類進化の「常識」を覆した“小さな巨人”、フローレス原人」

 今回、巨大コウノトリに関する新説が生まれたのは、翼の部分も含む21本の骨がフローレス島のリアンブア洞窟で発見されたからだ。この洞窟は、ステゴドンなどの動物にとって水場であり、暑さをしのぐ場所だったと考えられる。ならば肉食動物にとっては楽に狩りができる格好の餌場だったに違いない。コモドオオトカゲやフローレス原人の食べ残しを狙って洞窟に入ってきたコウノトリが、そのまま死んで化石となり、数万年後に科学者が掘り出すまで保存されていたのだろう。

島での進化

 島は進化にとって天然の実験場になる。孤立した島の場合、動植物は大陸とはかなり違う形で環境に適応することがある。例えば、大型の動物が限られた食料で生きられるように小型化したり、逆にげっ歯類やトカゲなどの小型動物が巨大化したりする現象は「島しょ化」と呼ばれる。

 フローレス島のコウノトリも2010年11月に学術誌「Zoological Journal of the Linnean Society」で初めて発表された当時は「島しょ化」した鳥だと考えられた。森の中で小動物を捕らえる生活に適応した、飛べない大型の鳥とみられていたのだ。しかし今回、空を飛べたことが明らかになったことで、この巨大コウノトリは島で独特の進化を遂げた鳥ではなく、かつて世界中の空を飛んでいた大型のコウノトリの仲間だった可能性が高くなった。

次ページ:空飛ぶ巨鳥

ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の
会員*のみ、ご利用いただけます。

会員* はログイン

*会員:年間購読、電子版月ぎめ、
 日経読者割引サービスをご利用中の方、ならびにWeb無料会員になります。

おすすめ関連書籍

ダーウィンが来た! 生命大進化 第2集 現生動物への道が開かれた (中生代 ジュラ紀~新生代)

生命がどのように生まれ、時代を生き抜き、進化したのかを圧倒的なビジュアルとともに見る、壮大な進化のドラマ。第2集「現生動物への道が開かれた」では、中生代 ジュラ紀から新生代までを網羅。〔全国学校図書館協議会選定図書〕

定価:1,980円(税込)

おすすめ関連書籍

絶滅動物図鑑 地球から消えた生き物たち

カンブリア紀の不思議な生き物から人類の祖先まで全87種を、豊富なイラストとわかりやすい解説で堪能するビジュアル図鑑。 〔全国学校図書館協議会選定図書〕

定価:3,300円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加