ホリネズミが「農業」、地下トンネルで作物を育て食料に、研究

カロリーの20~60%を補充、「農業」と呼べるかについては異論も

2022.07.13
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トンネルを掘ってできた土を捨てるナントウホリネズミ。(PHOTOGRAPH BY HOUSTON WELLS)
トンネルを掘ってできた土を捨てるナントウホリネズミ。(PHOTOGRAPH BY HOUSTON WELLS)
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 農業を営むのは、人間だけとは限らない。例えばハキリアリは、切り落とした木の葉を巣に持ち帰り、そこで菌類を育ててエサにしている。腐った木の中で菌類を育てる甲虫もいる。あるスズメダイの仲間は、好物の藻が生える場所の手入れをし、好ましくない藻が生えてきたら引き抜くという。(参考記事:「ハキリアリは農業を営む(パート1)」

 そして今回、ナントウホリネズミ(Geomys pinetis)という小さな哺乳類も、植物の根を管理し、肥料を与え、食べるために収穫していることを示す証拠が見つかった。この研究論文を7月11日付け「Current Biology」に発表した研究者たちは、これらの行動が農業の定義に当てはまると主張する。

「ナントウホリネズミは、植物の成長を助け、土壌を改善し、農作物の管理を行っています。農作物の管理を農業と呼ぶならば、ホリネズミは農業を営んでいると言ってよいと思います」と、米フロリダ大学の生物学教授で、研究に携わったフランシス・ジャック・プッツ氏は言う。

地下のスペシャリスト

 ナントウホリネズミは、一生のほとんどを地下で過ごし、単独で行動する。北米と中米の草原に数多く生息しているが、人間がその姿を見ることはほとんどない。地下1メートル、長さ150メートルを超えるトンネルを掘ってできた砂の山が、彼らの存在に気づく唯一の手掛かりであることが多い。

 ホリネズミの解剖学的構造は、まさにこのような地下生活に適している。前歯の後ろで口を閉じることができるため、土を飲み込むことなく前歯でトンネルを掘ることができる。内側に毛が生えた頬袋に、種子や植物を詰めて運ぶ。2021年7月19日付けで学術誌「The American Midland Naturalist」に発表された研究により、暗闇の中で体が蛍光に光ることも判明した。地下深くで仲間とコミュニケーションを取ったり、敵から逃れるために役に立つのかもしれない。(参考記事:「カモノハシは紫外線で青緑に光る、目的は不明」

 これまで、ホリネズミは新しいトンネルを掘りながら、その途中で見つけた根を食べてお腹を満たしていると考えられてきた。しかし、トンネルを掘る作業は、ただ地上を歩くのと比べて300~3000倍もエネルギーを消費する。トンネルを掘りながら見つけた根を食べるだけでは、その消費分を補うことはとても無理だと、研究者たちは言う。

 研究に関わったフロリダ大学の学生研究者であるベロニカ・セルデン氏は、次のように言う。「トンネルを1メートル掘ったとして、その1メートルの間に生えている根を食べるだけで1メートル分のトンネルを掘るだけの体力を確保できるかというと、私たちが研究した全ての例の中で1例を除いて、答えは『ノー』です」

次ページ:トンネルの中に根が生えてきた

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