ホホジロザメは体色を変えられるとの報告、獲物に近づくためか?

獲物を見つけると、体の色を変えてそっと近づいているのかもしれない

2022.07.18
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バハカリフォルニア半島沖のグアダルーペ島生物圏保護区で泳ぐホホジロザメ。(PHOTOGRAPH BY THOMAS P. PESCHAK, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
バハカリフォルニア半島沖のグアダルーペ島生物圏保護区で泳ぐホホジロザメ。(PHOTOGRAPH BY THOMAS P. PESCHAK, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 300本もののこぎり状の歯で獲物を襲い、体重は2トンにも達する巨大なサメ「ホホジロザメ(Carcharodon carcharias)」。今回、さらに興味深い特徴として、体の色を変えられることが新たな研究で示唆された。これは獲物に忍び寄るための擬態戦略かもしれない。

 南アフリカ沖で行われた新たな実験はこうだ。まず、アザラシに似せた模型をボートで引っ張って、数匹のホホジロザメをおびき寄せる。そして、色比較のために白色、灰色、黒色のテープを貼ったボードのそばで、サメを水面から跳び上がらせた。研究者チームはホホジロザメが跳び上がるたびに写真を撮り、一日中実験を繰り返した。

南アフリカ沖で、ホホジロザメが餌ではなく実験装置に噛みつこうとした。「言うまでもなく、実験は完全に計画通りに進んだというわけではありませんでしたが、結果は驚くべきものでした」とギブス・クグル氏は言う。(PHOTOGRAPH BY GIBBS KUGURU)
南アフリカ沖で、ホホジロザメが餌ではなく実験装置に噛みつこうとした。「言うまでもなく、実験は完全に計画通りに進んだというわけではありませんでしたが、結果は驚くべきものでした」とギブス・クグル氏は言う。(PHOTOGRAPH BY GIBBS KUGURU)
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 ある1匹のホホジロザメ(あごに膿がたまっていたので簡単に識別できた)は、時間帯によって濃い灰色にも薄い灰色にも見えた。科学者らは、天候や光量、カメラの設定などの変動要因を補正するソフトウエアを使い、このホホジロザメの色の変化を検証した。

 一方で、研究者はホホジロザメの1匹から人道的に組織のほんの一部を採取し、急いで研究室に持ち帰った。そして、サメが生まれながら持っている数種類のホルモンで組織片を処理した。

 研究チームが低速度撮影カメラと共焦点顕微鏡を使用して観察したところ、驚いたことにホホジロザメのメラノサイト(メラニン色素をつくる皮膚細胞)はアドレナリンを浴びると収縮して色が明るくなった。一方で、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)という別のホルモンはメラノサイトを分散させ、肌の色が濃くなった。

「ホホジロザメの細胞に、太陽を浴びる、獲物を見つけるといった刺激を疑似的に与えることで、色が明るくなったり暗くなったりしないかを確かめたかったのです」と、オランダのワーヘニンゲン大学のサメ研究者ギブス・クグル氏は言う。

「実験は大成功でした」と話すクグル氏は、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーであり、2022年のナショナル ジオグラフィックウェイファインダー賞の受賞者でもある。

 限られた数の個体から得られたデータであるため、ホホジロザメの体色変化能力はまだ実証されておらず、まだ論文も学術誌に掲載されていないと、今回の研究を行った科学者たちは注意を促す。しかし、他の専門家からは、ホホジロザメが体の色を変える能力をもつ可能性に興味をそそられると期待する声も聞こえる。(参考記事:「海のハンター ホホジロザメ 有名だけど、謎だらけ」

次ページ:ホホジロザメの秘密を解き明かす

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