残り1500羽のムスメインコを守れ、太平洋の小島の一途な努力

島民の半数が保護団体に参加、仏領ポリネシアのリマタラ島

2022.07.08
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フランス領ポリネシアの固有種ムスメインコ。野生にわずか1500羽しか残されておらず、絶滅の危機にある。3分の1がリマタラ島に暮らしているが、生息地の破壊に直面している。(PHOTOGRAPH BY AGAMI PHOTO AGENCY, ALAMY STOCK PHOTO)
フランス領ポリネシアの固有種ムスメインコ。野生にわずか1500羽しか残されておらず、絶滅の危機にある。3分の1がリマタラ島に暮らしているが、生息地の破壊に直面している。(PHOTOGRAPH BY AGAMI PHOTO AGENCY, ALAMY STOCK PHOTO)
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 フランス領ポリネシアの小さな島リマタラでは毎日、日の出とともに、ティラハ・ムーロア氏が犬のコハとランニングに出掛ける。コハは毛むくじゃらのボーダー・テリアの雑種で、ある重要な任務を負っている。クマネズミを見つけ出して退治するという仕事だ。

 外来種のネズミから島を守れるのはコハしかいない。島にネズミがいない状態を維持することは極めて重要だ。ボートや貨物船でやって来るネズミは、太平洋諸島の鳥にとって唯一にして最大の脅威だ。ネズミたちはいとも簡単に、鳥の巣を見つけて卵を食べてしまう。

 特に重要な鳥がいる。美しい深紅の胸に、緑と青の頭を持つムスメインコ(Vini kuhlii)だ。ポリネシアの固有種で、野生にわずか1500羽しか残されておらず、3分の1が小さなリマタラ島に暮らしている。国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種(Endangered)に指定されているが、ムスメインコを守るための取り組みは、狭い地域に集中する種の保護に特有の課題を浮き彫りにする。

「貨物船が到着するたび、コハと港に行き、陸に揚がってくるコンテナをすべてチェックします」と自然保護団体リマ・ウラの一員であるムーロア氏は説明する。「コハがネズミのにおいに気付いたら、大勢でコンテナを取り囲み、それからコンテナを開けます…あとはコハがやってくれます」。つまり、ネズミを退治するということだ。

 コハの努力は実を結んでいる。「コハは私たちの守護者です。私たちのスターです」とムーロア氏は笑顔で語る。フランス領ポリネシアにある118の島と環礁のうち、クマネズミがいない島はリマタラを含めて3つしかない。ムーロア氏はこの状態の維持に全力を注いでいる。

島を象徴する「赤」

 リマタラはフランス領ポリネシアにある8.5平方キロほどの小島で、白い砂浜とココヤシの木に縁取られている。3つの小さな村と無数のタロイモ畑にある看板、バス停、建物にはことごとく島の象徴でありマスコットでもあるムスメインコが描かれている。

 フランス領ポリネシアでは赤を意味する「ウラ」という呼び名で親しまれるこの鳥は、かつて南太平洋に広く分布していた。しかし、18世紀にはすでに、絶滅の危機にひんしていた。ポリネシア人がマントや頭飾りを赤い羽根で彩るために乱獲したせいだ。(参考記事:「米インコの絶滅、やはり人間が原因か、DNAで判定」

 1900年の時点で、ムスメインコが生き残っているのはリマタラ島のみとなり、島の女王タマエバ5世が狩猟を禁止した。その結果、残された群れが守られ、20世紀の間、安定した状態が維持された。

 ところが、1990年代以降、リマタラ島でも脅威が高まり、1992年の1000羽から推定500羽まで減ってしまった。ムスメインコにとってクマネズミは災難だが、生息地の破壊や巣の競合など、数を減らす要因はほかにもある。(参考記事:「インコとオウム、その人気がはらむ危機と問題」

次ページ:巣をカメラで監視、映っていたのは

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