母乳育児を大変だと感じる女性が多いのはなぜか

赤ちゃんの健康と成長に欠かせない母乳、最近わかってきたこと

2022.07.10
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マクルーアさんと娘のエズメちゃん。完全母乳の育児を希望していたマクルーアさんは、入院中に写真に写る搾乳機を病院から支給され、3時間ごとに搾乳していたが、エズメちゃんは哺乳瓶の方を好むようになったという。(PHOTOGRAPH BY JENNIFER MCCLURE)
マクルーアさんと娘のエズメちゃん。完全母乳の育児を希望していたマクルーアさんは、入院中に写真に写る搾乳機を病院から支給され、3時間ごとに搾乳していたが、エズメちゃんは哺乳瓶の方を好むようになったという。(PHOTOGRAPH BY JENNIFER MCCLURE)
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 母親の多くは、子どもを母乳だけで育てることの難しさを実感している。

 米疾病対策センター(CDC)によると、第1子を出産したばかりの女性の80%は母乳のみでの育児を希望するものの、米国人女性が取得する一般的な産後休暇期間である3カ月が過ぎた時点で母乳のみを続けている母親は半分以下に減り、米国小児科学会が推奨する6カ月後までそれを続けている母親はわずか4分の1だという。多くは、粉ミルクとの併用か、母乳を完全にやめてしまっている。

 粉ミルクが問題を引き起こすこともある。今年の初め、米国で粉ミルクの細菌汚染事故が発生、大規模なリコールが実施された。その結果、全米が深刻な粉ミルク不足に陥った。(参考記事:「粉ミルク汚染で乳児が死亡、細菌クロノバクター・サカザキとは」

 生理学的に母乳育児ができないとされる女性は全体の5~10%とみられている。ところが現実には、十分に母乳が出ない、または自分の母乳に栄養が足りないため赤ちゃんの成長が阻害されていると訴える女性の数はそれよりもはるかに多い。そして、なぜそのような問題が起こってしまうのかに関する研究は驚くほど少ない。牛乳に関しては、乳製品業界の資金によって幅広く研究が行われている一方、人間の母乳に関する研究はほとんど進んでいないのだ。

 最近になってようやく、遺伝子や食事内容など母乳に影響する要因に研究者が目を向けるようになった。これから母親になろうとする女性たちにはより多くの情報がもたらされることが期待されている。

「科学は急速に発達しています。この分野に関しては、今後10年間がとても楽しみです」と、米マサチューセッツ・ローウェル大学で生物医学と栄養科学を研究するシャノン・ケレハー氏は言う。

母乳はどうやって作られる?

 女性の胸は妊娠中に変化し、様々なホルモンを分泌して母乳製造工場を作り上げる。ケレハー氏は、乳腺をブドウの房にたとえる。実の部分で母乳が作られ、茎に当たる乳管を通じて外へ出る仕組みだ。

 女性は出産すると、胎盤を排出するとともにプロゲステロンというホルモンが急激に下がり、母乳の産生が始まる。

 赤ちゃんが乳頭を吸うと、母親の体内でプロラクチンとオキシトシンが分泌される。この2つのホルモンは、乳腺の細胞に母乳を作るように促す働きをする。体が母乳を作り続けるためには、定期的な授乳を続けなければならない。それが途絶えると、乳腺は妊娠前の状態に戻る。(参考記事:「新型コロナ患者で溢れる病院よりも自宅出産を選ぶ女性たち」

次ページ:母乳育児はなぜ難しいのか

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