重さ300キロの巨大エイが見つかる、淡水魚の世界記録を更新

メコンオオナマズ(293キロ)を上回る

2022.06.22
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 近年、ホーガン氏のチームはカンボジア北部での調査に力を入れてきた。同地域を流れるメコン川は季節ごとに氾濫し、生物多様性が高く、その水の中では年間2000億匹もの魚が生まれると言われている。この場所はまた、エイを含むメコン川の巨大魚の多くにとって、乾期の重要な避難場所になっていると考えられている。

 調査チームは、地元の人々と協力して漁師たちのネットワークを作り、エイなどの絶滅が危惧される魚を捕まえた場合、川に戻す前に連絡を入れてもらえるよう手配していた。カンボジアではエイを捕獲するのは違法ではないが、食用には向かないため、漁師たちがこれを狙うことはめったにない。それでも、ときには偶然釣り糸にかかることがあり、6月13日の夜に捕獲された記録的な大きさのエイもそうした一例だった。

 トゥンさんからの連絡を受けたチームのメンバーは、拠点を置いているカンボジアの首都プノンペンからメコン川に急行した。現地では、付近で活動していた別の米国人科学者のチームも合流し、エイの尾の付け根にすばやく追跡タグを埋め込んだ。このタグを手がかりに、どこで餌を食べ、どこへ移動し、どこで出産をしているかといったエイの行動の詳細が判明することを、研究者らは期待している。

「トゥンさんがわたしたちに連絡をくれたという事実は、地元のコミュニティーと協力することの重要性を示しています」とホーガン氏は言う。

 エイが川に戻されるころには、カンボジアの漁業関係者や村人など大勢の人たちが集まり、この巨大な生物を写真に収めていた。満月の日に放流されたことから、この巨大エイにはクメール語で「満月」を意味する「ボラミー」という名前がつけられた。この名前はまた、美しい女性を表現する言葉でもある。

参考ギャラリー:瀬戸際の巨大魚たち 写真8点(画像クリックでギャラリーへ)
参考ギャラリー:瀬戸際の巨大魚たち 写真8点(画像クリックでギャラリーへ)
南米のガイアナ共和国にあるコロナの滝の下流で捕獲したバンパイア・フィッシュを持つホーガン氏。パラヤ(Hydrolycus scomberoides)の別名を持つこのアマゾンの捕食者は、ピラニアなどの魚を長い牙で突き刺して食べる。(PHOTOGRAPH BY ERIN BUXTON, NATIONAL GEOGRAPHIC CHANNELS)

希望の兆候

 ホーガン氏にとって、今回エイが見つかった川は、もっと多くの巨大エイが生息している可能性がある場所というだけでなく、絶滅の危機にひんしているすべての巨大魚にとっての希望でもある。世界の川にすむ巨大魚の多くが差し迫った状況にあるのは確かだが、楽観視できる理由がなくなったわけではないと、ホーガン氏は言う。

 たとえば北米では、保護活動により、淡水魚の中でも特に巨大なアリゲーターガーミズウミチョウザメといった種の個体数が回復してきている。アマゾンのピラルクーにも同じ傾向が見られ、先住民のコミュニティーによる漁獲の制限が功を奏している。(参考記事:「巨大魚アリゲーターガーは生きた化石、「殺さない新手法」で研究」

「人々がこうした生物の存在を知り、その素晴らしさを理解するようになれば、認識は変わっていきます」とホーガン氏は言う。「2005年に記録を更新した魚は、殺されて食肉として売られてしまいました。しかし今われわれは、世界最大となった淡水魚を追跡しています。以前の対応とは大違いです。すべてが失われたわけではないのです」

文=STEFAN LOVGREN/訳=北村京子

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