重さ300キロの巨大エイが見つかる、淡水魚の世界記録を更新

メコンオオナマズ(293キロ)を上回る

2022.06.22
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【動画】「ワンダーズ・オブ・ザ・メコン」のチームメンバーや政府関係者、地域の人々が、タグをつけた重量300キロの巨大淡水エイ、ジャイアント・フレッシュウォーター・スティングレイをメコン川に戻す。

最大の淡水魚を探して

「メガフィッシュ・プロジェクト」の本来の目的は、世界の大型淡水魚を発見、研究、保護することだった。同プロジェクトは、少なくとも人間と同程度の大きさまで成長し(全長1.8メートルあるいは体重90キロ以上)、淡水にのみ生息する種(オオチョウザメのような、淡水と海水を行き来するものは含まない)を調査の対象と定めた。ホーガン氏は当初、対象とする魚を30種ほどリストアップしていた。

 じきにわかってきたのは、そうした魚の多くは簡単には見つけられないということだった。彼らは人里離れた場所の、多くの場合は濁った水の中で暮らしている。生まれたときから巨大魚の生息域付近で暮らしてきた人たちでさえ、その魚を目にするどころか、話を聞いたことさえないということもある。調査を始めたころは、巨大魚を研究している科学者もあまりいなかった。

 一方で明らかだったのは、川にすむ巨大魚は、その数が減っているということだった。要因は、乱獲や競合する外来種、水質汚染、回遊魚のライフサイクルを阻害するダムの存在などだ。

 世界の巨大淡水魚の個体数は1970年以降、90%近く減少している。これは陸や海にすむ脊椎動物の2倍近い数字だ。世界最大の淡水魚の座を狙える位置にいたハシナガチョウザメは、ホーガン氏が調査を開始してまもなく絶滅してしまった。(参考記事:「世界の巨大淡水生物、40年間で約9割も減っていた」

 ホーガン氏の調査が進むにつれ、その焦点は次第に保護へと移っていった。「世界最大の魚を探すことだけが目的ではないのです」とホーガン氏は言う。「われわれは常に、何億年も前から地球上に存在しながら、今にも絶滅しようとしている動物を保護する方法を探すことを重視してきました」(参考記事:「【解説】最大級の淡水魚ハシナガチョウザメが絶滅」

水に触れさせた状態で体を固定しておくため、緑色の防水シートの上で体長を測定される巨大エイ。(PHOTOGRAPH BY S. OUNBOUNDISANE, FISHBIO)
水に触れさせた状態で体を固定しておくため、緑色の防水シートの上で体長を測定される巨大エイ。(PHOTOGRAPH BY S. OUNBOUNDISANE, FISHBIO)
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記録破りのエイ

 ホーガン氏は以前より、川にすむ世界最大の生物はエイの仲間から見つかるのではないかと考えていた。エイの仲間には、数十種の淡水種が存在する。アルゼンチンで実施した巨大魚の探索では、ホーガン氏自身が、重さ約181キロのショートテイルド・リバースティングレイと呼ばれるエイを捕まえている。しかし、東南アジアにすむジャイアント・フレッシュウォーター・スティングレイ(Urogymnus polylepis、通称ヒマンチュラ・チャオプラヤ)はそれよりもずっと大きくなることを、氏は知っていた。(参考記事:「世界最大の淡水魚は何か? 新たな有力候補が浮上」

 ホーガン氏とタイの研究者チームは、バンコクからほど近い2つの川で、数年間にわたってエイの調査を行った。その間、彼らは2005年に記録されたメコンオオナマズに匹敵するほどの大きさのエイを数匹捕獲したものの、いずれの例でも重量を正確に確認することはできなかった。(参考記事:「車並みの超巨大淡水エイを捕獲、世界記録か」

 2016年には、タイのメークローン川で化学物質の流出事故が発生し、少なくとも70匹の巨大エイが死んだ。2年後に科学者らが現地で調査を行ったところ、エイの全体的な数は以前よりもはるかに減り、大型のものはほとんど見られなくなっていた。

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