アルマジロがさらに北東へ生息域を拡大、原因は不明、米国

一卵性の四つ子を産むココノオビアルマジロ、ついに東部のバージニア州にも

2022.06.20
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米ジョージア州リトルセイントサイモンズ島のココノオビアルマジロ。米南部の州であるここジョージアでは、1980年代からアルマジロが姿を見せ始めた。(PHOTOGRAPH BY PETE OXFORD, MINDEN PICTURES)
米ジョージア州リトルセイントサイモンズ島のココノオビアルマジロ。米南部の州であるここジョージアでは、1980年代からアルマジロが姿を見せ始めた。(PHOTOGRAPH BY PETE OXFORD, MINDEN PICTURES)
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「またアルマジロ発見。今度は死骸」

 メールの件名にはそう書かれていた。送信者は米国東部バージニア州野生生物資源局の野生生物学者マイク・フィーズ氏で、受け取ったのは米バージニア自然史博物館で哺乳類学の学芸員を務めるナンシー・モンクリーフ氏。2019年5月のメールだが、実はこの2カ月前にも、未確認ながらバージニア州でアルマジロが目撃されていた。

 理由は定かではないものの、過去100年間、米国では、ココノオビアルマジロ(Dasypus novemcinctus)の生息域が少しずつ北東へ拡大している。元々中南米と、テキサス州を含む米国南部の一部に生息していたのだが、1850年代に米国とメキシコの国境を流れるリオグランデ川を、1929年に始まった大恐慌の頃にミシシッピ川を渡った。1990年代にはテネシー州に到達、その後ノースカロライナ州へ入り、今やバージニア州にまで姿を見せるようになった。

 このアルマジロをバージニア州で初めて確認した報告を学術誌「Southeastern Naturalist」に2021年6月に発表したモンクリーフ氏は、波が押し寄せるようにに北へ北へと広がっていることに心底驚かされたと語る。

 ココノオビアルマジロは体重約5キロ、昆虫を食べ、穴を掘って巣を作る。2022年5月の時点で、モンクリーフ氏のもとには他にも数件の目撃情報が寄せられていたが、州内にどれほど広がっているのか、数はどれくらいなのかははっきりしない。同州の西にあるウエストバージニア州や北にあるメリーランド州では、目撃されたとの情報はない。

 だが近年の暖冬により、暑い気候を好むアルマジロは、さらに北にあるニュージャージー州やペンシルベニア州にもすみ着くようになるだろうと、複数の研究が示唆している。米国北東部の気温は、1895年から2011年の間に約1.1℃上昇した。2080年までには5.5℃まで上昇するとも考えられている。

高い適応力

 米ミズーリ州にあるパーク大学の元生態学者で、現在は定年退職しているジェームス・タウルマン氏は、これが自然な現象なのか、または気候変動による気温の上昇によるものなのか、それとも両方なのかはわからないと話す。タウルマン氏は、1990年代からアルマジロの分布域拡大について調べてきた。

 いずれにしても、アルマジロが新しい生息地に難なく適応しているのは間違いない。

「湿気が多く、昆虫がたくさんいる土があり、しかも冬が暖かいと、すぐに繁殖します」と、タウルマン氏は言う。

 しかし、ジョージア州バルドスタ州立大学の生態学者でアルマジロの専門家であるコリーン・マクドノウ氏は、その拡大にも限界があるという。例えば、テキサス州よりも西は乾燥しすぎてエサとなる昆虫があまりいないため、生存は難しいと思われる。北東部にしても、寒冷な気候やその他知られていない要因などで今以上に拡大できるかどうかは疑問だと指摘する。

 アルマジロといえば乾燥した草原地帯の動物というイメージが強く、岩盤や森、川が多いバージニア州は生息地に適さないように思われる。しかしモンクリーフ氏によると、実はアルマジロは木陰のある川沿いを好んで移動する。そうした環境には、エサも、隠れ場所も、湿気も多い。

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