「世界最古の木」更新か、樹齢5000年超の木の報告、チリ

長く記録を保持するイガゴヨウマツをしのぐパタゴニアヒバ、研究者ら騒然

2022.06.04
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米国ネバダ州のグレートベースン国立公園内のワシントン山に自生する樹齢1400年のイガゴヨウマツ。その印象的な姿は、米国の25セント記念硬貨の裏面に使用されたことがある。(PHOTOGRAPH BY KEITH LADZINSKI)
米国ネバダ州のグレートベースン国立公園内のワシントン山に自生する樹齢1400年のイガゴヨウマツ。その印象的な姿は、米国の25セント記念硬貨の裏面に使用されたことがある。(PHOTOGRAPH BY KEITH LADZINSKI)

 米国ネバダ州グレートベースン国立公園のワシントン山の頂上近くで、公園の生態学者であるグレッチェン・ベイカー氏は双眼鏡をのぞいた。すぐ眼下の石灰岩から、世界最古級の生物が生えているのが見えた。

 マツ属の樹木、イガゴヨウマツ(Pinus longaeva、ブリスルコーンパイン)の幹は密度が高く、白っぽい色をしており、何世紀も突風や雨にさらされて太い縄のようにねじれている。この過酷な地にイガゴヨウマツが君臨しているのは、他の生物がほぼ生き延びられないためでもある。

 険しいスネーク山脈に沿った標高約3400メートルの一帯には、草も低木も生えず、害虫もほとんどいない。山火事をもたらす人間もいない。近くに樹木がないので、病原菌が広がることもない。

[画像のクリックで拡大表示]

 生存を脅かす要因がない環境で、これらの老木は長く孤独な歳月をただ淡々と生きてきた。数十年も生きる針状の葉に水を蓄え、時間をかけて少しずつ成長していく。成長が非常に遅いので、甲虫や病気が侵入できないほど木の密度が高くなる。

 イガゴヨウマツの中には、ギザにピラミッドができる前から生き延びてきた木がある。カリフォルニア州のホワイトマウンテンにある「メトセラ」という古木もそのひとつで、年輪データによると樹齢4853年に達する。現存するイガゴヨウマツでは最長寿だ。

 研究者たちは長い間、この古木こそが正確に測定された、世界最古の単体の(クローンではない)生物だと考えてきた。だが2022年5月、この説に異論が生じた。チリの研究者が、同国に生えているパタゴニアヒバ(Fitzroya cupressoides)の樹齢を独自の技術で調査したところ、5000年を超える可能性が高いというのだ。その結果が正しければ、この南米の針葉樹は、新たに世界最古の樹木(幹)の称号を冠することになる。

チリの峡谷にそびえるパタゴニアヒバ。南米の研究者たちが、この木は少なくとも樹齢5000年以上で、現存する世界最古の木(幹)だと主張しているが、専門家の間には懐疑的な見方もある。(PHOTOGRAPH BY JONATHAN BARICHIVICH)
チリの峡谷にそびえるパタゴニアヒバ。南米の研究者たちが、この木は少なくとも樹齢5000年以上で、現存する世界最古の木(幹)だと主張しているが、専門家の間には懐疑的な見方もある。(PHOTOGRAPH BY JONATHAN BARICHIVICH)

 この主張に樹木研究者たちは騒然となった。しかし、パタゴニアヒバは温帯雨林に生育する木であり、イガゴヨウマツとは生育環境が大きく異なることもあって、懐疑的な見方もある。だが、樹齢競争の行方がどうなるにせよ、イガゴヨウマツもパタゴニアヒバも、今後の数十年をうまく生き延びられるのかという問題に直面している点では同じだ。(参考記事:「世界で巨木が死んでいる、115年間で原生林の3分の1超が消失」

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