銀河系中心部の超大質量ブラックホール「いて座A*」を取り巻く超高温の物質の写真が初めて撮影された。ブラックホール自体から光が逃げ出すことはできない。(EVENT HORIZON TELESCOPE COLLABORATION)
銀河系中心部の超大質量ブラックホール「いて座A*」を取り巻く超高温の物質の写真が初めて撮影された。ブラックホール自体から光が逃げ出すことはできない。(EVENT HORIZON TELESCOPE COLLABORATION)
[画像をタップでギャラリー表示]

 私たちの銀河系(天の川銀河)の中心にあるブラックホールの姿を初めて撮影した画像が発表された。ブラックホールを直接とらえた画像としては、2019年のM87銀河のブラックホールに続き2例目。2022年5月12日付けで天体物理学の専門誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載された10編の論文で詳しく報告している。

「銀河系の中心にいる優しい巨人『いて座A*(エー・スター)』を初めて直接撮影した画像です。お見せできることをうれしく思います」と、米アリゾナ大学のフェリアル・エゼル氏は記者会見で語った。「私は20年前にこの天体に出会って以来、愛してきましたし、理解しようと努力してきました。けれども今まで、いて座A*が本当にブラックホールであることを示す直接的な画像はありませんでした」

 銀河系の中心部にある「いて座A*」は、太陽400万個分の質量をもつ超大質量ブラックホールだ。この底なしの時空の穴は、周囲を猛スピードで公転するガスや塵、恒星などに覆い隠されていて、普通は見ることができない。

 画像では、輝く物質からなるいびつな環が、暗闇の穴を包んでいるのがわかる。この暗闇が、いて座A*のシルエットだ。画像はブラックホールの「事象の地平線」に迫っている。そこを越えると、恒星、惑星や塵はもちろん、光さえ二度と抜け出すことはできず、永遠に失われてしまう。

「ブラックホールに近づきすぎた光は、のみ込まれて事象の地平線を越えてしまうため、中心には真っ暗な虚空だけが残ります」とエゼル氏は説明する。

 今回の画像は、「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT:事象の地平線望遠鏡)」という地球サイズの望遠鏡ネットワークによる2017年の観測データを基に作成された。200人以上の科学者が参加した国際共同研究の成果だ。地球から5000万光年離れたM87銀河の中心にある巨大ブラックホールの画像を2019年に発表したのも、このプロジェクトだった。どちらの画像も、世界8カ所の電波望遠鏡を結び付け、仮想的に地球サイズの1つの巨大な望遠鏡を作り上げて撮影された。(参考記事:「解説:ブラックホールの撮影成功、何がわかった?」

[画像をタップでギャラリー表示]

 発表から数分後には、世界中のブラックホール研究者がこの画期的な画像を称賛した。いて座A*の研究で2020年にノーベル物理学賞を受賞した米カリフォルニア大学ロサンゼルス校の天文学者アンドレア・ゲズ氏は、ナショナル ジオグラフィック宛てのメールに「ブラックホールを取り巻くリングのすばらしい画像!!!!」と書いてきた。「EHTチーム、ブラボー!」(参考記事:「巨大ブラックホール、アインシュタイン理論を証明」

 科学者たちが手にしたブラックホールの画像はこれで2つになった。おかげで、私たちの物理学、特にアインシュタインの一般相対性理論が、超大質量ブラックホールの周囲の極限環境でも通用するかどうかの研究を前に進めることができる。また、今回とM87の観測結果を比較して、異なる質量のブラックホールの振る舞いについて、より詳しく知ることもできる。

次ページ:なぜかジェットを噴射していない

会員向け記事を春の登録キャンペーンで開放中です。会員登録(無料で、最新記事などメールでお届けします。

会員登録(無料)のメリット

  • 1ナショジオ日本版Webの
    無料会員向け記事が読める
  • 2美しい写真と記事を
    メールマガジンでお届け

おすすめ関連書籍

ビジュアル 銀河大図鑑

この上なく美しく、どの本よりも詳しく、誰にでもわかりやすい。大人も子供も楽しめる、本格的な宇宙図鑑! 〔日本版25周年記念出版〕

定価:6,930円(税込)