列を成す神々。現地のアラム語で刻まれた文字によれば、メソポタミアの嵐の神アダド(3つの稲妻を持つ右端の神)、月の神シン、太陽の神シャマシュ、この地域で豊壌の女神とされていたアタルガティスが含まれている。(PHOTOGRAPH AND DRAWING BY M. ÖNAL, BASED ON LASER SCAN BY BY CEVHER MIMARLIK, ANTIQUITY PUBLICATIONS LTD)
列を成す神々。現地のアラム語で刻まれた文字によれば、メソポタミアの嵐の神アダド(3つの稲妻を持つ右端の神)、月の神シン、太陽の神シャマシュ、この地域で豊壌の女神とされていたアタルガティスが含まれている。(PHOTOGRAPH AND DRAWING BY M. ÖNAL, BASED ON LASER SCAN BY BY CEVHER MIMARLIK, ANTIQUITY PUBLICATIONS LTD)
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 古代の神々は横幅3.5メートル超の岩壁に列を成している。6人の顔が確認でき、そのうち4人は何の神かまで特定できる。例えば、嵐の神アダドは3つの稲妻を持っている。繊細に彫られた肖像画は、最も大きなもので高さ1メートル近くに達し、神の頭部と上半身が黒い線で強調されている。石をさらに削り、浮き彫りにするつもりだったのかもしれない。(参考記事:「古代水路から神と王の「激レア」な彫刻を発見」

 アダリ氏によれば、神々のポーズ、髪やひげのスタイルなど、アッシリアのものとはっきりわかる特徴もあるが、彫刻の細部には、現地のアラム文化の影響が色濃く見られるという。アラム人は何世紀にもわたってこの地域に居住していたが、紀元前9世紀、急速に拡大する新アッシリア帝国の支配下に入り、はるか東のメソポタミア北部に暮らす王が統治するようになった。

 また、アダリ氏によれば、彫刻の横にはアラムの文字が刻まれており、神々もアッシリアではなくアラムの名前で記されているという。「アラムのシンボルがアッシリアのスタイルと融合しています」とアダリ氏は説明し、この融合は、遠く離れたアッシリアの統治者が力による支配ではなく、現地の指導者との融和を画策していた証拠かもしれないと言い添えた。

 イタリア、ローマ・ラ・サピエンツァ大学の考古学者ダビデ・ナダリ氏も、アッシリアとアラムの特徴を見事にあわせ持ったこの壁画は、強力な帝国とその重要な領土の関係に政治的な光を当てるものだと考えている。

 ナダリ氏はメール取材に対し、次のように述べている。「壁画の横に刻まれたアラムの文字は、地域社会と対話するという意思表示であり、一方アッシリアの具象的なスタイルには、アッシリアの政治力を受け入れる必要があるという意味が込められています」

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文=TOM METCALFE/訳=米井香織