黒人チームがエベレスト登頂に成功、新たな歴史

増えつつあるアフリカ系登山家、「きっと社会に良い影響があると思います」

2022.05.16
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黒人登山家が構成する「フル・サークル・エベレスト・エクスペディション・チーム」は、自分たちの登頂によって新しい世代の探検家がインスピレーションを受けてほしいと願っている。(PHOTOGRAPH BY AMRIT ALE, FULL CIRCLE EVEREST)
黒人登山家が構成する「フル・サークル・エベレスト・エクスペディション・チーム」は、自分たちの登頂によって新しい世代の探検家がインスピレーションを受けてほしいと願っている。(PHOTOGRAPH BY AMRIT ALE, FULL CIRCLE EVEREST)
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 黒人登山家が構成する「フル・サークル・エベレスト・エクスペディション」の7人のメンバーが5月12日、8人のネパール人ガイドとともにエベレスト登頂に成功した。

 1953年にエドモンド・ヒラリーとテンジン・ノルゲイが初登頂して以来、世界最高峰のエベレスト(チベット語で「世界の母たる女神」を意味するチョモランマ)に登頂した人は少なくとも4000人いる。しかし、このうち黒人はわずか10人しかいなかった。フル・サークル・チームは、新しい世代の探検家が勇気や自信を持つことにつながればと願っている。(参考記事:「エベレスト 幻の初登頂」

「フル・サークルの7人のメンバーが登頂に成功したことを報告できて、大変光栄です」と、チームリーダーのフィリップ・ヘンダーソン氏は語る。氏は、世界最高の登山家たちを育成するネパールの「クーンブ・クライミング・センター(KCC)」で数少ない黒人の指導員の1人でもある。「私を含む数人のメンバーは登頂しませんでしたが、登頂したすべてのメンバーが無事にベースキャンプに戻りました。歴史的瞬間を祝います!」

エベレスト遠征隊の多くは、吹雪の可能性が低く、風速が通常秒速22.4メートル以下になる5月の第1週から第3週の間に登頂を挑む。(PHOTOGRAPH BY JAY DICKMAN, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
エベレスト遠征隊の多くは、吹雪の可能性が低く、風速が通常秒速22.4メートル以下になる5月の第1週から第3週の間に登頂を挑む。(PHOTOGRAPH BY JAY DICKMAN, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 メンバーは、これまでも様々な「初」を達成してきた。アビー・ディオンヌ氏は、米国の黒人女性として初めてクライミングジムの経営者となった。ジェームズ・“KG”・カガンビ氏は、アフリカの黒人として初めて米アラスカ州のデナリとアルゼンチンのアコンカグアに登頂した。チームは女性3人、男性8人で構成され、年齢も29〜60歳と幅広い。職業もデータサイエンティスト、社会学の大学教員、高校の化学教師、海洋電子工学技術者など様々だ。

2022年4月上旬、フル・サークル・エベレストのメンバーたちは、高地に体を慣らすため、ネパールのエベレスト・ベースキャンプに登った。(PHOTOGRAPH BY PHILIP HENDERSON, FULL CIRCLE EVEREST)
2022年4月上旬、フル・サークル・エベレストのメンバーたちは、高地に体を慣らすため、ネパールのエベレスト・ベースキャンプに登った。(PHOTOGRAPH BY PHILIP HENDERSON, FULL CIRCLE EVEREST)
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 3月下旬、ネパールの首都カトマンズで合流した一行は、飛行機でルクラの町へ。そこからクーンブ谷を毎日約300メートルずつ登り、サウス・エベレスト・ベースキャンプ(標高5364メートル)に到着して、登頂を目指す最終アタックに最適な天候を待った。ほとんどの遠征隊は、吹雪の可能性が低く、風速が通常秒速22.4メートル以下(安全な風速は一般に秒速13.4メートル以下とされる)になる5月の第1週から第3週にかけて登頂を果たす。

 チームは何年もかけて準備を整えた。自分たちの成功によって、登山というスポーツがインクルーシブ(包摂的)でないという認識が変わり、より多くの黒人が野外での冒険を楽しむようになることを望んでいる。

次ページ:白人ばかりの登山を変える

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