ただし、「すべての種のカメが脱皮するわけではなく、その時期もさまざまです」と話すのは、米ジョージア大学の生態学者で名誉教授のウィット・ギボンズ氏だ。ロビッチ氏との共著に、『Turtles of the World: A Guide to Every Family(世界カメ大鑑)』がある。
「例えばニシキガメは1週間もかからずに甲板が剥がれますが、アカミミガメは1年にわたって徐々に剥がれます」とギボンズ氏は言う。
トカゲは、多くの場合、脱皮の準備ができると体がくすみ、目が曇る。体をくねらせ始め、皮に最初の裂け目を作るために岩やざらざらした場所に体をこすりつける。ようやく抜け出したトカゲが残していく古い皮は、ロビッチ氏によればナイロンのストッキングに似ているそうだ。
抜け殻には色がないが、模様を見ればヘビやトカゲの種がわかるという。「白黒コピーのようなものです」とギボンズ氏。例えばスカーレットキングスネークには赤、黄、黒の目立つ縞模様があるが、抜け殻ではこれがグレーの色合いの違いとして表れる。大きさや鱗の種類などの要素を合わせれば、どの種か特定できる。(参考記事:「ヘビのウロコに『剥がれない潤滑油』、初の発見」)
抜け殻からその持ち主の居場所がわかることもある。しっぽを見ると、「ヘビが行った方向を指し示しています」とギボンズ氏は言う。
脱いだ皮を食べるものもいる
脱皮は、皮膚に付く寄生虫の除去にも役立っている。例えばオーストラリアのヤモリの一部は、表皮を脱ぎ去ることで有害なダニも取り除く。
トカゲやカエルの中には、脱いだ皮を食べてしまうものがいる。マダガスカルゴキブリなどの昆虫も、古い外骨格を食べる。(参考記事:「戦士か恋人か、戦略『選ぶ』ゴキブリを発見」)
「自分が近くにいる証拠を隠すのは賢明でしょう」と言うシュフラン氏。「それだけでなく、過去の自分につぎ込んだエネルギーを蓄え続けることにもなります」
脱皮後、新しい殻が固くなるまでに30分弱から数時間かかるが、その間はけがをしたり捕食者に襲われたりする危険が高い。アメリカン・ロブスターのメスは、オスの巣穴に入って行き、脱皮して、オスとつがいになる。オスはこの無防備なメスを数日の間守り続ける。(参考記事:「ロブスターは正常位、海の中の仰天セックスライフ」)
動物が固い殻を破って出てくるとき、さまざまな出来事が起きている。
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