古代のギリシャ、ローマ、エジプトなど、文字による記録や壮大な建築物などが多く残る文明については比較的よく知られている。だが、痕跡や詳しい記録は多くないものの、その影響と功績は同じぐらい注目に値する古代文明も存在した。とりわけ以下の5つの地域で文明を築いた人々は、驚異的な遺産を残しており、有名な古代文明にも引けを取らない輝きを放っている。
広大な太平洋の開拓者たち
まだエジプトにピラミッドが建設されていなかった時代に、太平洋では、腕利きの船乗りたちが荒波を乗り越えていた。約5万年前、彼らは東南アジアから簡素な帆かけ舟で海を渡り、当時は陸続きだったオーストラリアとニューギニアや、近隣の島々へ移住した。
紀元前8000年頃には、温暖化によって海面が上昇し、オーストラリアとニューギニアは海で隔てられた。まもなく、アボリジニ(オーストラリア先住民)、パプア人、オーストロネシア人など、オセアニアの先住民がニューギニアの北部沿岸に進出し、交易を始めた。人々は、両側に浮きがついたアウトリガーカヌーで外洋を航海し、次々に太平洋諸島の島々を発見して定住した。その子孫は、はるか南米大陸沿岸にまで到達したという説もある。(参考記事:「2013年6月号 アボリジニ 祖先の道をたどる」)
ネアンデルタール人がまだヨーロッパにいた約4万年前、オーストラリアには人々が定住し始めていた。北からの移民は新しい土地に適応し、世界で最も長く続く文化が発展した。彼らは金属や土器を使用せず、弓矢や車輪も開発しなかったが、神話と芸術に富む文化が培われた。神聖な場所には、「ドリームタイム」(時間を超越した世界)から祖先が訪れ、岩絵に姿を変える、と人々は信じていた。こうした精霊を描いた印象深い壁画「ワンジナ」がオーストラリア北西部のキンバリー州で発見されており、4000年前のものと考えられている。(PHOTOGRAPH BY GRANT DIXON/GETTY IMAGES (LEFT) AND PHOTOGRAPH BY MICHAEL NOLAN/ROBERTHARDING/ALAMY STOCK PHOTO (RIGHT))
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