米国で幻覚キノコ狩りが静かな人気、都会の庭や植え込みに自生

米国で広がる合法化の支持、マジックマッシュルームについてわかっていること

2022.05.03
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わずか数本を摂取するだけで幻覚作用を起こすマジックマッシュルーム。米国太平洋岸北西部には、十数種類が都市部の植え込みなどに普通に生えている。写真は、P. オボイデオシスティディアータという名のマジックマッシュルーム。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL CHRISTOPHER BROWN)
わずか数本を摂取するだけで幻覚作用を起こすマジックマッシュルーム。米国太平洋岸北西部には、十数種類が都市部の植え込みなどに普通に生えている。写真は、P. オボイデオシスティディアータという名のマジックマッシュルーム。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL CHRISTOPHER BROWN)

 冬から春にかけての雨上がりの日、米国西海岸の道を歩いていると、家の庭やビルの前の植え込みなどに、たくさんのキノコが生えているのが目につく。

 サンフランシスコ近辺でも様々な種類のキノコを見かけるが、キノコ通にとって特に気になるのが、いわゆる「マジックマッシュルーム」として知られる幻覚キノコだ。

 なかでもよく見られるのは、シビレタケ属のキノコ3種。シロシベ・キアネセンス(Psilocybe cyanescens)、シロシベ・アレニー(Psilocybe allenii)、そしてシロシベ・オボイデオシスティディアータ(Psilocybe ovoideocystidiata)は、幻覚作用を起こすことが知られている。(参考記事:「幻覚剤でメンタルが整う!?「マイクロドージング」が米国で拡大」

 P. キアネセンスとP. アレニーには、幻覚を引き起こす化合物であるサイロシビン(シロシビン) が含まれている。サイロシビンを含むシビレタケ属のキノコは数百種にのぼり、最近では、こうしたキノコには心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病の治療に有効な可能性があるとして注目が集まっている。米国では合法化の支持が広がり、精神疾患に対する治療効果を示す証拠も積み上がりつつある(編注:日本では麻薬原料植物として規制)。

ギャラリー:幻覚を引き起こすマジックマッシュルーム 写真7点(写真クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:幻覚を引き起こすマジックマッシュルーム 写真7点(写真クリックでギャラリーページへ)
ウッドチップに生えたP. オボイデオシスティディアータ。それを取り囲む、棒のような形の黒いキノコは、クロサイワイタケの仲間だ。腐食した木に生えるクロサイワイタケは、木材に色と模様をつける働きをするため、商業利用されている。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL CHRISTOPHER BROWN)

 しかし、こうしたキノコの生物学、生態学、進化の歴史について、わかっていることはまだわずかだ。米オハイオ州立大学の生物学者で、菌類の進化遺伝学を研究するジェイソン・スロット氏によると、マジックマッシュルームは倒れたばかりの木よりも、他の菌類によって栄養が抜き取られ、ある程度分解が進んだ後の古い倒木によく生えるという。また、ガーデニングで使用するウッドチップが、特にお気に入りだ。

 都市や郊外には、ウッドチップで覆われた人工の庭や植え込みが多い。つまり、ネズミやハト、ゴキブリのように、マジックマッシュルームも人間のすぐそばで生きることができるだけでなく、むしろこうした場所が繁殖に最も適しているようなのだ。

 キノコ採集家で、化学者でもあり、オレゴン州でマジックマッシュルームの研究室を運営するジョーダン・ジェイコブス氏は、「人間は、巨大なコンクリートジャングルという極めて反自然的なものを築き、そこに大量のウッドチップをまきます。人間の意識に長期的な影響を与える幻覚性のキノコが、こうした環境を自分たちのすみかとして選んだというのは、とても興味深いです」と話す。

次ページ:なぜ幻覚作用を身に付けた?

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