2022年4月18日、米ニューヨーク、ブルックリンの会場で新型コロナ感染症の検査を行う医療従事者。ニューヨークでは、感染力の高いオミクロン株のBA.2系統が感染者の増加に拍車をかけている。(PHOTOGRAPH BY SPENCER PLATT, GETTY IMAGES)
2022年4月18日、米ニューヨーク、ブルックリンの会場で新型コロナ感染症の検査を行う医療従事者。ニューヨークでは、感染力の高いオミクロン株のBA.2系統が感染者の増加に拍車をかけている。(PHOTOGRAPH BY SPENCER PLATT, GETTY IMAGES)
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 米国では新型コロナウイルス感染症の感染者数が再び増加している。背景にあるのはオミクロン株のBA.2系統と、その“子孫”でさらに感染力が強いBA.2.12.1亜系統だ。わずか2カ月間という短い停滞期の後、多くの人々がマスクの着用をやめ、パンデミック前の生活に戻ろうとしている中での増加に、専門家らは懸念を募らせている

 4月1日から24日の間に、新型コロナの新規感染者は75%も増加した。その多くがBA.2系統によるものだ。

 4月22日の時点で、BA.2は米国の感染者の約68%、BA.2.12.1は約29%を占めている。入院患者数は今のところ、パンデミック開始以来の最低水準ではあるものの、全国的に増加傾向にある。また、高齢者施設の入居者や職員の感染者数は、およそ3カ月間減少を続けた後、再び増加に転じた(編注:日本の厚労省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードは4月20日、日本では4月半ばにはBA.2系統の割合が全国で約8割に達し、5月1日には東京都で98%になるという予測を発表した)。

「BA.2の感染拡大は、ウイルスの感染力の増大と、パンデミックの規制緩和の両方に関係していると思われます」と、米ハーバード大学医学部の免疫学者ダン・ブルーク氏は言う。「そのどちらもが現在の急増に関わっているのは明らかです」

 加えて、国内のワクチン接種率も停滞している。米国民のうちブースター接種(追加接種)を受けた人はわずか45.6%であり、南部を中心に少なくとも10州では、人口の3分の1以上がいまだにワクチンを接種していない。これが非常に憂慮されるのは、初期データによって、BA.2は従来のオミクロン株よりも重症化する可能性が示唆されているからだ。

 オミクロン株の第一波がやってきたのは、多くの米国民がワクチン接種を済ませていた時期だった。そのため、以前の株ほど重症化を引き起こすようには思われず、その症状は軽症であると認識されるようになったと、香港大学の疫学者ベンジャミン・カウリング氏は言う。ただし「軽症」というのは、かつて優勢だったデルタ株が引き起こした極めて深刻な病状と比較してのことでしかない。

 カナダ、トロント在住のコミュニケーション・ストラテジスト(戦略研究家)、メリンダ・マルドナドさんは、ワクチンの3回接種を終えた後、カナダでオミクロン株の波がピークを迎えていた2021年12月にブレイクスルー感染を経験した。その結果、何週間もベッドから出られず、3カ月が過ぎた今も、ひどい倦怠感、ブレインフォグ、認知障害などの後遺症に悩まされている。(参考記事:「めまい、混乱、言葉が出ない…コロナは軽症でも認知力低下の恐れ」

「"軽症"というのは、死にはしない、集中治療室に入るようなことにはならないという意味です」とマルドナドさんは言う。「わたしにとって、これは"軽症"と呼べるようなものではありませんでした」

 現在、BA.2系統は最初に報告されたオミクロン株のBA.1系統よりも感染力が強く、感染時にはウイルス量がより増え、新型コロナ感染症の症状が長引くという証拠が集まりつつある。

BA.2はなぜ重症化するのか

 BA.2より先に報告されたオミクロン株のBA.1は、それ以前の変異株よりも感染力が強かった一方で、主に上気道にとどまっていたため、デルタ株よりも肺へのダメージが少なかったと、米ミシガン州立大学の数学者・分子生物学者のグォウェイ・ウェイ氏は言う。現在のワクチンはBA.1に対する予防効果があり、ワクチン接種者や過去の感染による免疫を持っていた人にとっては、ほとんどの場合、以前の変異株に比べてさほど重症化することもなかった。

次ページ:「BA.2の症状は以前考えられていたほど軽くはない」

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