「空のバニーガール」から安全守るプロへ、女性CAの闘いの物語

かつては驚きの性的なキャンペーンも、半世紀に及ぶ権利のための闘争

2022.04.04
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20世紀半ば。トランスワールド航空の客室乗務員が賃上げを求めストライキを行っている。 (PHOTOGRAPH BY BETTMANN ARCHIVE, GETTY IMAGES)
20世紀半ば。トランスワールド航空の客室乗務員が賃上げを求めストライキを行っている。 (PHOTOGRAPH BY BETTMANN ARCHIVE, GETTY IMAGES)

 先日、米国の格安航空会社(LCC)のフロンティア航空で、フライト中に泥酔して暴れた男性の乗客が、座席にダクトテープで固定されるという事件があった。この男性は2人の女性客室乗務員の体を触り、1人の男性客室乗務員を殴ったため、乗務員たちは残りの旅程の間、彼を拘束した。

 新型コロナウイルス感染症の世界的大流行が始まって以来、米国では客室乗務員に対する暴行が急増している。2021年、米連邦航空局は5981件の暴行を確認した。マスク着用義務に対する怒りやパンデミックによるストレスが、客室乗務員に対する身体への、そして言葉での暴力を煽っている。

 しかし、乗客が客室乗務員を見下し、逆らい、時に身体を触るような行為はいまに始まった事ではない。むしろ50年前には航空会社の黙認のもと、しばしば行われていた。勇敢な「スチュワーデス」たちは、独創的な方法で反撃し、今日まで続く客室乗務員による活動の火付け役となった。

 新刊『The Great Stewardess Rebellion(スチュワーデスたちの偉大な反乱)』の取材中、私は客室乗務員業界の進化と革命について多くを学んだ。以下に紹介するように、彼らの物語に驚かされ、その強さとフェミニズムに刺激を受けた。

先行した「エア・ストリップ」キャンペーン

 1970年代、米国の航空会社は巧妙なマーケティング戦略を次々に打ち出した。安全性でも目的地でもなく、スチュワーデスを売りにしたのだ。

 まずは、スチュワーデスに露出度の高い制服を着させた。サウスウェスト航空はオレンジ色のホットパンツに白いロングブーツ。アメリカン航空はタータンチェックのミニスカートに、しっぽのついた毛皮のラクーンハット。トランスワールド航空は紙でできたドレスをデザインした。

1970年代、パシフィック・サウスウエスト航空の客室乗務員が着用しているのは、パステルカラーの制服にロングブーツだ。 (PHOTOGRAPH COURTESY SAN DIEGO AIR AND SPACE MUSEUM ARCHIVE)
1970年代、パシフィック・サウスウエスト航空の客室乗務員が着用しているのは、パステルカラーの制服にロングブーツだ。 (PHOTOGRAPH COURTESY SAN DIEGO AIR AND SPACE MUSEUM ARCHIVE)

 その後、スチュワーデスたちを前面に押し出した広告を展開。ナショナル航空は「フライ・ミー」キャンペーンで実際の客室乗務員を起用し、「私はリンダ。私を飛ばせて」といったコピーで大成功を収めた。コンチネンタル航空のコピーは、「私たちはあなたのためにしっぽ(尾翼)を振ります」 だった。

ナショナル航空の「Fly Me(私を飛ばせて)」キャンペーンをはじめ、1960年代から1970年代にかけ、米国の多くの航空会社が性差別的な広告を展開した。 (PHOTOGRAPH COURTESY NELL MCSHANE WULFHART)
ナショナル航空の「Fly Me(私を飛ばせて)」キャンペーンをはじめ、1960年代から1970年代にかけ、米国の多くの航空会社が性差別的な広告を展開した。 (PHOTOGRAPH COURTESY NELL MCSHANE WULFHART)

 先行していたのはブラニフ航空で、1965年に「エア・ストリップ」キャンペーンを開始した。これは、女性客室乗務員がシャーベットトーンの制服で飛行機に乗り込み、機内で徐々に衣服を脱いでいくというものだった。離陸直前にコートのファスナーを開け、ブラウスとスカートが見えるようにする。夕食の配膳が終わると、スカートの前を開け、ブラウスを脱いで、ブルマとタートルネックの組み合わせを見せる。

1967年の就航後、サウスウエスト航空はホットパンツ、ヒップベルト、白いロングブーツといったきわどい制服で知られるようになった。 (PHOTOGRAPH BY ALAN BAND, KEYSTONE/GETTY IMAGES)
1967年の就航後、サウスウエスト航空はホットパンツ、ヒップベルト、白いロングブーツといったきわどい制服で知られるようになった。 (PHOTOGRAPH BY ALAN BAND, KEYSTONE/GETTY IMAGES)

「空のバニーガール」的なアプローチを好んだ客は多かった。しかし、広告が卑猥になればなるほど、そして制服の露出度が高くなればなるほど、客室乗務員は体を触られ、つねられ、見下されるようになった。1967年には、あるスチュワーデスが緊急避難を指示していたところ、男性乗客が彼女を抱え上げて飛行機から運び出し、「君はここにいるべきではない」と言い放った。

 1970年代半ばには、コンチネンタル航空の幹部が、出発する男性乗客の頬に女性客室乗務員がキスをしなければならないと定めた。

 また1970年に導入されたボーイング747型機の多くは、らせん階段を上がった2階にカクテルラウンジを備えていたため、飲み過ぎた乗客は、火のついたタバコを通路に落としたり、階段から転げ落ちたりした。客室乗務員の抗議によって、間もなくアルコール規制は復活した。

次ページ:客室乗務員が反撃 「自分で飛べ!」

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