パレスチナのガザ地区ガザ市にあるアル・オマリ・グレートモスクで、祈りをささげるパレスチナ人の男性。神聖なラマダンの期間中、ムスリムの人々は、断食、無欲の行い、祈りなどを通じて、アッラーの神との絆を深める。(PHOTOGRAPH BY ALI JADALLAH, ANADOLU AGENCY/GETTY)
パレスチナのガザ地区ガザ市にあるアル・オマリ・グレートモスクで、祈りをささげるパレスチナ人の男性。神聖なラマダンの期間中、ムスリムの人々は、断食、無欲の行い、祈りなどを通じて、アッラーの神との絆を深める。(PHOTOGRAPH BY ALI JADALLAH, ANADOLU AGENCY/GETTY)
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 毎年、世界各地のムスリム(イスラム教徒)の人々は、ラマダンの開始を告げる三日月の観測を待ちかねている。ラマダンは、イスラム暦の第9月にあたり、イスラム教では最も神聖な月だ。

 今年のラマダンは、4月2日頃に始まり、5月2日頃にラマダン明けの大祭「イード・アル=フィトル」で終わる予定だ。イスラム暦は月の満ち欠けに基づいた太陰暦を使用しているので、太陽暦ではラマダンの開始日は毎年変わる。

 サウジアラビアなどでは、月観測委員会がラマダンの開始日と終了日を決定している。ラマダンの開始日は観測委員会が三日月を確認した翌日に始まるが、三日月は見つけにくく、しかも20分間ほどしか見えないので、その決定はむずかしい。空がかすんだり曇ったりして月を肉眼で確認できない場合は、月齢を計算して月が出ているかどうかを推測する。

ラマダンの起源

 ラマダンは、イスラム暦の月のひとつで、古代アラブの暦にも登場する。ラマダンという名は、「灼熱」を意味するアラビア語の「ar-ramad」に由来する。イスラムの教えでは、西暦610年に天使ジブリール(ガブリエル)が預言者ムハンマドの前に現れ、イスラム教の聖典となるコーランの教えを授けた。「ライラ・アルカドル」(力の夜)と呼ばれるこの啓示はラマダン月に起こったとされており、ムスリムの人々は、コーランの啓示を祝うために、この1カ月間に断食を行う。

 114章から成るコーランは神「アッラー」の教えを説いた書、コーランを補足するハディースは、預言者ムハンマドの思想や行いを記録した伝承の書で、この2つがイスラム教の聖典となっている。

ラマダン中の過ごし方

 ラマダンの期間中、ムスリムの人々は、精神的に成長してアッラーの神との絆を強めるよう心がける。そのために、人々は祈りをささげ、コーランを読み、意識して無私無欲な行動をとり、うわさ話やうそ、争いを慎んで過ごす。

ラマダン中に、エルサレムのアルアクサ・モスクや「岩のドーム」近くで礼拝するイスラム教徒。(PHOTOGRAPH BY MUAMMAR AWAD XINHUA, EYEVINE/REDUX)
ラマダン中に、エルサレムのアルアクサ・モスクや「岩のドーム」近くで礼拝するイスラム教徒。(PHOTOGRAPH BY MUAMMAR AWAD XINHUA, EYEVINE/REDUX)
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 すべてのムスリムは、ラマダンの1カ月間、日の出から日没まで断食しなければならない。断食はイスラム教の五行(五つの信仰行為)のひとつだ。ただし、病人、妊婦、旅行者、高齢者、月経中の女性は、断食を免除される。期間中に断食できなかった日があっても、年内の一定の期間または数回に分けて断食を行って、埋め合わせることができる。

 ラマダン中、日の出前と日没後には地域の人々が集まり、食事を共にする。日の出前の朝食「サフール」は、一般に午前4時から、早朝の祈り「ファジュル」の前にとる。「イフタール」と呼ばれる夕食は、日没時の祈り「マグリブ」をすませた後、午後7時半頃から始まる。

 預言者ムハンマドが断食明けに水を飲んでデーツ(ナツメヤシの実)を食べたことにならって、サフールでもイフタールでも、まずデーツを口にする。中東で定番のデーツは、栄養価が高いうえに消化しやすく、日没まで断食した体に糖分を与えてくれるフルーツだ。

 ラマダンの最終日が過ぎると、人々は、夜明けの集団礼拝で始まる「イード・アル=フィトル」(断食明けの祭り)で、ラマダン明けを盛大に祝う。この3日間の祝祭の間、人々は集まって祈り、食事をし、プレゼントを交換し、先祖に対する敬意を新たにする。一部の都市では、イベントや大規模な集団礼拝も開催される。

 新型コロナの影響がまだ残る今年のラマダンでは、伝統的なサフールやイフタールの集まりはどうなるだろうか。どのような形で行われるにしても、この数世紀にわたる伝統の精神は、信仰と内省の機会として変わることなく受け継がれるだろう。

参考ギャラリー:イスラムが生んだ美しく壮麗な世界のモスク 写真17点(写真クリックでギャラリーページへ)
参考ギャラリー:イスラムが生んだ美しく壮麗な世界のモスク 写真17点(写真クリックでギャラリーページへ)
ボスポラス海峡を見下ろしてそびえる世界の傑作建築の一つ、アヤソフィア。(PHOTOGRAPH BY MURAT TUEREMIS, LAIF/REDUX)

イスラム教徒にとって最も神聖な、信仰と内省の期間となるラマダン、開始日は三日月の観測で決定。

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文=ESLAH ATTAR/訳=稲永浩子