写真家で映像制作者のレナン・オズターク氏とその遠征隊は、ウェイアシプ山の切り立った壁を200メートル以上垂直登攀する前に、ジャングルの泥と嵐に挑まなければならなかった。
道中、川で転倒し、防水機能のないカメラが水没するハプニングにも見舞われた。幸い、カメラは乾かすことができた。
オズターク氏はガイアナ、ブラジル、ベネズエラが交わるこの場所で、テプイと呼ばれるテーブルマウンテン(卓状台地)の壁を苦労して登り、熱帯雨林の滝の絶景や遠征の目的である生物多様性を写真に収めた。登山隊の一員としてキャリアをスタートさせた氏の装備は十分に整っていた。
そのオズターク氏を取材し、自身初となるナショナル ジオグラフィックの表紙の写真について語ってもらった。
骨の髄までずぶぬれに
4月号の特集記事「南米ギアナ高地 最後の秘境へ」は数年がかりの情熱的なプロジェクトの成果だ。オズターク氏の使命は、熱帯雨林とテプイが広がるベネズエラ南東部の辺境を探検し、この地域特有の生態系と動物種を記録することだった。渡航制限などの難題が立ちはだかり、プロジェクトは延期されたとオズターク氏は振り返る。(参考記事:「南米ギアナ高地 最後の秘境へ」)
プロジェクトには、この地域の保護に人生をささげる保全生物学者のブルース・ミーンズ氏と米国のプロロッククライマー兼作家のマーク・シノット氏も参加した。シノット氏はテプイを「ジャングルにそびえ立つ塔」と表現している。
オズターク氏によれば、今回の遠征では、登山やクライミングの知識はあまり役に立たなかった。過酷なジャングルが毎日のように難題を突き付けてくるせいだ。表紙を飾るテプイの写真を撮影し、旅を終えるまで、チームは当地の先住民の知識を頼りに、ジャングルを移動し、シェルターをつくった。
「テプイを垂直に登るため、その麓に到達するまでが、私たち全員にとって、これまで経験した中で最も困難な場所の部類でした」とオズターク氏は語る。
オズターク氏らは辺境行きの小型機に乗り、丸一日かけて川をボートで上り、ジャングルを1週間半かけて100キロ近く歩いた。
「空が見えないため、木々に覆われた下にいると、狭苦しく感じます」とオズターク氏は話す。「骨の髄までずぶぬれになりながら、未開のジャングルを移動し、人だけでなくすべての機材を安全に運ばなければなりません」