キューバには鳴き声の美しい鳥を飼う伝統があるが、人気の高まりによって鳥たちが危機にさらされている。
日曜日の早朝、鳴き声自慢の鳥を連れた男性たちが集まり始めていた。
キューバの首都ハバナの、人けのない場所だ。今は鳥の渡りの時期に当たる9月。このところ鳴き鳥の人気が高まり、違法な捕獲や販売が急増していた。鳴禽類(めいきん)と呼ばれるスズメ亜目のゴシキノジコやルリノジコ、ムネアカイカルは特に需要が高い。日曜日にはそうした鳴き鳥のコンテストが人気を集めた。
数日前、フェイスブックに数十あるキューバの鳴き鳥愛好家グループの一つで、会場が告知された。私も2021年7月からそのグループに参加していたが、新型コロナウイルスの感染拡大による渡航制限のためキューバに赴くことができず、現地の知人が匿名で私の代わりに参加してくれることになった。
キューバでは2011年、多種の鳴き鳥を研究以外の目的で捕獲することが法律で禁止された。誰の鳥が最も長く、美しい旋律で鳴くか競い合う賭け事も違法になった。だが、そうしたコンテストの様子は公然とインターネットに投稿されているし、なかには野生の個体であることを明記して販売しようとする書き込みもある。
ハバナの国立自然史博物館で鳥類部門を担当する鳥類学者のソチル・アヨン・グエメスによると、パンデミックによるロックダウンの影響で、インターネット上での違法な取引がますます横行するようになったという。
鳥を飼うことは、キューバの伝統的な文化だ。「そのため、法律違反であっても社会的に容認されてきたのです」と、科学技術環境省の鳥類学者マイケル・カニザレスは語る。
趣味としての鳥の飼育は、スペインによる植民地時代に始まり、やがて広まっていった。そう語るのは、キューバ動物学会の元会長で、現在は自然や科学、文化を振興するNPO「アリグアナボ基金」の代表を務める、生物学者のヒラルド・アラヨン・ガルシアだ。鳴き声や色鮮やかな姿を楽しむために鳥を飼いたがるキューバ人は多く、世代を超えて受け継がれる伝統でもあるという。
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