ガーナの首都アクラのジェームズタウン地区にある小さな港で、船の準備をする漁師たち。およそ100キロ離れた別の港に住んでいるこのグループは、捕れた魚を売るためにやって来て、ここで一晩過ごす。(PHOTOGRAPH BY DENIS DAILLEUX)
ガーナの首都アクラのジェームズタウン地区にある小さな港で、船の準備をする漁師たち。およそ100キロ離れた別の港に住んでいるこのグループは、捕れた魚を売るためにやって来て、ここで一晩過ごす。(PHOTOGRAPH BY DENIS DAILLEUX)
この記事は雑誌ナショナル ジオグラフィック日本版2022年4月号に掲載された特集です。定期購読者の方のみすべてお読みいただけます。

西アフリカ沖の荒々しい海での漁は、勇ましい漁師たちだけではなく、沿岸の人々にとっても、生活を支え自然への敬意を育んできた伝統だ。

 私たちの海岸ではいつもと同じ光景が繰り返されている。

 コートジボワールのポールブエ、ガーナのングレシ、ガンビアのオールドジェスワン、ベナンのグラン゠ポポ、ガーナのアパム—こうした町の海岸に朝早く行ってみると、カヌーで戻ってきた漁師たちが話すファンティ、ガ、エウェといったさまざまな言語が耳に入ってくる。どれもガーナで使われている言葉だ。

 日が昇るなか、網を引く男たちの歌声がしだいに大きくなっていく。「イーバエイ、イーバケロー ——ほら来るぞ、大漁だ」。引き揚げられた魚が朝日を浴びて砂の上で激しく跳ね回り、漁師たちはそれらを大きな金属製のたらいに手早く仕分けする。

 捕れる魚は日によって違う。フエダイ、ハタ、マグロ、サバ、パンラ(メルルーサの仲間)といった、市場で普段から見かける魚だけでなく、皆の好物のエビ、ウナギ、エイのほか、形や大きさもさまざまの雑多な生き物が混ざる。

セコンディ゠タコラディの海辺の広場で、子どもたちが大きな魚の彫像を見上げる。赤と黄色と緑の縞に黒い星という、ガーナの国旗と同じデザインの台の上に載った魚の像は、漁のシンボルだ。(PHOTOGRAPH BY DENIS DAILLEUX)
セコンディ゠タコラディの海辺の広場で、子どもたちが大きな魚の彫像を見上げる。赤と黄色と緑の縞に黒い星という、ガーナの国旗と同じデザインの台の上に載った魚の像は、漁のシンボルだ。(PHOTOGRAPH BY DENIS DAILLEUX)

 私が属するガという民族は、未知なるものを恐れず、「アブレクマ、アバ、クマ、ウォ ——よそから来た人が、ここで心地よく暮らせますように」という考えが、文化に深く根差している。私のパークスという姓はヨーロッパ由来だが、ガの名前として受け入れられているのはそのためだ。もともとはジャマイカ人の血を引くシエラレオネ出身の祖父がガーナに持ち込んだ名前だった。西アフリカ沿岸の人々の多くは、寄せては返し、足を洗う波のように、臆することなく旅に出るし、訪れる旅人を温かく迎え入れる。

 だが西アフリカのなかでも、ガーナの漁師は特別な存在といえる。廃刊となった雑誌「ウェスト・アフリカ」が1963年に掲載した記事で、ガーナ人は「アフリカを股にかける漁師たち」と呼ばれた。ファンティ、エウェ、ガといった民族の漁師たちは、ナイジェリアからセネガルまで多くの国々に出向いて漁をしていたからだ。

 ガーナの西部から中部に住むファンティ語を話す漁師たちは、西アフリカの沿岸でも特に荒い海で育つため、世界一泳ぎが得意なだけでなく、カヌーの操作も優れているといわれてきた。

プリンス・カトゥファが地元でよく見られる漁船の模型を頭に載せて、アクラ近郊のモムフォードの浜辺でポーズをとる。ガーナ人にとって、海は自分たちのアイデンティティーの重要な部分を占めている。(PHOTOGRAPH BY DENIS DAILLEUX)
プリンス・カトゥファが地元でよく見られる漁船の模型を頭に載せて、アクラ近郊のモムフォードの浜辺でポーズをとる。ガーナ人にとって、海は自分たちのアイデンティティーの重要な部分を占めている。(PHOTOGRAPH BY DENIS DAILLEUX)

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