メキシコの麻薬カルテル、野生生物にまつわる犯罪を拡大

漁業を牛耳って海洋生物をロンダリング、取引先は主に中国か

2022.03.11
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メキシコのバハカリフォルニア州沖で、漁網の準備をする漁師たち。メキシコでは、合法的な漁業が水産物の違法取引に利用されるケースが増えている。また、脅されて犯罪組織の片棒を担がされる漁師もいる。(PHOTOGRAPH BY GUILLERMO ARIAS/AFP VIA GETTY IMAGES)
メキシコのバハカリフォルニア州沖で、漁網の準備をする漁師たち。メキシコでは、合法的な漁業が水産物の違法取引に利用されるケースが増えている。また、脅されて犯罪組織の片棒を担がされる漁師もいる。(PHOTOGRAPH BY GUILLERMO ARIAS/AFP VIA GETTY IMAGES)
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 メキシコの麻薬カルテルが、野生生物犯罪にまで手を広げつつある。米国ワシントンDCのシンクタンク、ブルッキングス研究所が公表する予定の報告書によると、麻薬カルテルがメキシコの合法的な漁業を牛耳ることで、違法に水揚げした海洋生物の「ロンダリング」を行っているという。(参考記事:「自警団を隠れ蓑にする麻薬カルテル」

 これまでも、カルテルは中国の伝統薬に使われるトトアバという魚の浮袋(浮力を調整する器官)や、高級家具などに使われる植物のシタンの密売に関わってきたが、最近は、こうした野生生物の中国などへの密輸にますます力を入れている。そして、その対価として麻薬や覚せい剤の原料となる化学物質を受け取る。(参考記事:「犬が薬物中毒になっている、原因は人間、米調査」

「いわば、レモネードを買うのではなく、レモンと砂糖を買って、カルテルがレモネードを作るということです」と、今回の報告書の著者で、ブルッキングス研究所の上級研究員であるバンダ・フェルバブ・ブラウン氏は言う。

 この報告書は、メキシコ、中国、米国、その他の国の現職および元政府関係者、環境保護団体、漁業関係者など73人にインタビューした結果をまとめたものだ。インタビューは全て、匿名を条件に行われた。

 さらに報告書は、メキシコで体の一部がないジャガーの死骸が発見されるという事件が相次いでおり、体の部位が中国の伝統薬として密輸されている可能性を指摘する。その他、爬虫類、ナマコ、アワビ、フカヒレも、時には米国経由でメキシコから中国へ運ばれているという。

漁師への脅し

 フェルバブ・ブラウン氏によると、犯罪組織は時間をかけて少しずつ漁業界に入り込んでいったという。最初は、トトアバなど保護種の密漁を牛耳っていたが、そのうちコルビナといった普通の魚を取る小規模の業者を狙い、水揚げした魚を独占的にカルテルに卸すよう強要し始めた。

 さらに最近では、シナロア・カルテルなどの麻薬組織が、漁船を多く所有する企業や、ホタテやロブスターなど高価な魚介類を輸出用に加工する業者にまで、影響力を行使するようになっている。麻薬カルテルはこうした合法的な企業を利用して、密猟した魚介類のロンダリングを行うのだ。シナロア・カルテルは、「現在、合法的な水産加工工場を開業する手続きを進めているとされ、工場員を募集している」と、報告書は言う。また、麻薬カルテルは、外国人観光客向けのレストランなどに、自分たちの魚だけを仕入れるように強要している。

 他にも、シナロア・カルテルは過去5年間、中国人バイヤーに卸すナミガイの許可証を買い占めて合法的なナミガイ漁を支配する一方で、違法な漁業も指揮して、取れたナミガイのロンダリングを行っている。

次ページ:増加する中国との取引

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