爆発音で目が覚めたこと。大急ぎでパスポートを探したこと。ロシア軍から逃れて、暗闇の中、震えながら列車に乗ったこと。どこか身を隠せる暖かい場所へ行きたいと願ったこと。
避難民一人ひとりが語る物語は、どれも悲しみに満ち、そして互いに驚くほど似通ったところがある。それはおそらく、わずか数日のうちに100万人以上の人々の身にいや応なしに降りかかった苦しみから来るものだろう。故郷を追われ、東欧の国境で過酷な現実に直面しているという苦しみだ。
避難民のひとりイリーナ・ロプハさんは、ポーランドの国境の町プシェミシルを目指してジリジリと進む車列の中で2日間を過ごした。

夫と話をする時間はたっぷりあった。話の内容は以前のような、家を買おうとか、エジプトに旅行しようとかいうものではなく、生き延びることについてだった。
国境に到着すると、別れの時がやってきた。18歳から60歳までのウクライナ人男性は、後に残って抵抗運動に加わるよう命じられている。抵抗運動にはほかにも、生まれて初めて武器を手にする女性たちや、炊き出しをしたり、火炎瓶を作ったりしている少数の市民たちが参加している。
動画:決断
イリーナさんの夫は地元の教会で、キエフから避難してくる人たちを迎える準備を手伝うことになっている。別れの直前、「夫は背を向けて泣き出しました」と彼女は言う。
そしてイリーナさんは、子供たちと飼い犬と一緒に避難した。
ここ数十年で最大規模の避難民たちは今、ヨーロッパの片隅で、安心できる居場所を探している。ヨーロッパの人々は、疲労困ぱいで逃れてくるウクライナの人たちを暖かく迎え入れている。
避難民の中には、外国からウクライナを訪れていた人もいれば、ウクライナ東部で長年の紛争を生き延びてきた人もいる。そして彼らの大半は、家族と引き離され、それでも心を強く保とうとしている人たちだ。
動画:避難
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