太古の空飛ぶ爬虫類である翼竜は、思いのほか早く巨大化の道を歩み始めていたのかもしれない。そんなことを示唆する新種の翼竜化石が、英スコットランドで発見された、2月22日付で学術誌「Current Biology」に発表された。
およそ1億6700万年前、現在のスカイ島の浅い海の上空を、アホウドリくらいの大きさの翼竜が飛んでいた。眼下の海岸では、恐竜たちが闊歩していた時代だ。この翼竜は何らかの理由で息絶えたのだろう。2017年、荒波が打ち寄せるスカイ島の海岸で、非常に保存状態の良いその化石が偶然見つかった。
この新種の翼竜は、Dearc sgiathanach(ジャーク・スキアンアックと発音)と命名された。論文によると、化石は頭蓋骨、四肢骨、尾、肋骨、脊椎骨に損傷がなく、きわめて良好な状態だという。
「化石を記述する際は『大腿骨のかけら、クチバシの小片』といった具合になりがちなのですが、ジャークの場合は幸運なことに保存状態がきわめて良いです」と、論文の筆頭著者で、英エディンバラ大学の博士課程に在籍する古生物学者ナタリア・ジャギエルスカ氏は語る。
ジャギエルスカ氏のチームは、状態の良いジュラ紀(2億500万年前~1億4500万年前)の翼竜化石としては、ジャークが最大だと主張している。
現代の鳥類と同様に、翼竜の大きさは、翼開長(広げた両翼の長さ)で示すのが一般的だ。もっと後の時代の翼竜は、世界の他の地域でも発見されており、なかでも、白亜紀(1億4500万年前から6600万年前まで)の巨大なケツァルコアトルスは、翼開長が10メートル以上もある。(参考記事:「史上最大の翼竜、こんなに頭が大きかった」)
一方、ジャークが生きていたのはジュラ紀中期。この時代の化石は数が少ないため、ジャークが発見されるまで、翼開長が1.8メートルを超える翼竜の痕跡はほとんど見つかっていなかった。今回、研究者はジャークの翼開長を2.5メートル以上と推定している。つまり、現代で最も翼の大きな鳥、アホウドリと同じくらいとなる。
「おそらく、メアリー・アニング(1828年にディモルフォドンという翼竜を発見した英国の古生物学者)の時代以降、英国で発見された最上の化石だと思います」と、今回の論文の著者の一人で、エディンバラ大学の古生物学者スティーブ・ブルサット氏は語る。氏は、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもある。(参考記事:「巨大翼竜は飛べなかった? 島で独自に進化か」)
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