インドのナガラホール・トラ保護区では保護活動が成果を上げ、トラやヒョウの個体数が回復している。
インド南西部のカルナータカ州にあるナガラホール・トラ保護区は、青々と茂る森に霧が立ち込め、神秘的な雰囲気が漂っている。
インドゾウが低木や木の葉を食べながら、ゆったりと木々の間を進んでいき、巨大な耳がリズミカルにはためく。泥道の先の草地では、「インドヤギュウ」とも呼ばれる野生のガウルが、こちらには目もくれずに草をはんでいる。
私たちは、この森のロッジに12年住んでいる写真家のシャーズ・ジャンの案内で車を走らせ、アクシスジカの群れのそばで止まった。青くきらめくような一羽のカワセミが木から木へと飛び回っている。霧の中に日が差し込んできた。遠くでシカの鳴き声が響き渡り、静寂を破る。近くに捕食者が潜んでいることを知らせる合図だ。
ナガラホールでは、このように警戒を呼びかけるシカの鳴き声を耳にすることが多くなった。ベンガルトラやインドヒョウの個体数が増えているのだ。こうしたビッグ・キャット、大型ネコ科動物を一目見ようと、この保護区には観光客が押し寄せる。なかでも、しばしば目撃される黒いヒョウは、特に人気がある。「クロヒョウ」と呼ばれることもある黒いヒョウは、遺伝子変異により毛色が黒くなった個体だ。
848平方キロの保護区のうち、観光客が入れる区域は10分の1未満だ。観光区域の南端にはカビーニ川が流れ、川沿いに低木や背の高い草が茂る。川向こうには草地や小川、深い森があり、トラとヒョウが共存するのに最適の環境だ。トラは下生えの中を歩き回り、ヒョウはトラに襲われる危険のない木の上で過ごす。
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