オミクロン株別系統が世界で急増、なぜ“ステルス”? 危険度は

従来系統とほぼ同時期に発生か、感染力は1.3倍の推定も

2022.02.07
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2022年1月、パンデミックが続くメキシコシティーで、新型コロナ検査のために男性からサンプルを採取する医療従事者。(PHOTOGRAPH BY EDGARD GARRIDO, REUTERS)
2022年1月、パンデミックが続くメキシコシティーで、新型コロナ検査のために男性からサンプルを採取する医療従事者。(PHOTOGRAPH BY EDGARD GARRIDO, REUTERS)
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 現在、これまでとは別系統の新たなオミクロン株が世界で急増しつつある。「ステルスオミクロン」と呼ばれるこのウイルスは、国際的な分類法ではオミクロン株(B.1.1.529)の「BA.2系統」という名称で、従来のオミクロン株(BA.1系統)よりも感染力が強く、そしておそらく高い免疫回避能力を備えている。そのため、専門家は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)をさらに長引かせるおそれがあると懸念している。

 多くの国で、BA.2はBA.1と入れ替わりはじめている。1月末から1日の新規感染者数が5万人を超える日も出てきたデンマークでは、現在BA.2系統が優勢だ。インドとフィリピンの一部でも、BA.2がオミクロン株の主流になっているようだ。米国ではすでに半数以上の州で約250人の感染者が確認されている。

 世界保健機関(WHO)はまだBA.2を明確な「懸念される変異株(VOC)」とは考えていないが、その広まりを引き続き監視している。スイス、バーゼル大学バイオセンターのバイオインフォマティクス研究者であるコーネリウス・レーマー氏によると、BA.2系統はBA.1系統と同時期に共通の祖先から生じた可能性が高く、「子孫」ではなく「兄弟」であるという。(参考記事:「急拡大のオミクロン株、現状の要点は? 詳しく解説」

「BA.1が先に優勢になったのは先に広まったからにすぎず、ここにきてBA.2が追いついてきたということでしょう」と推測するのは、米フレッド・ハッチンソンがん研究センターの進化ウイルス学者で、米ハワード・ヒューズ医学研究所の研究員でもあるジェシー・ブルーム氏だ。

 BA.2が「ステルスオミクロン」とも呼ばれるのは、一部の国でオミクロン株とデルタ株などを見分ける目印にしていたスパイクタンパク質の変異がないからだ。BA.1系統ではスパイクタンパク質から2個のアミノ酸が失われた部分があり、比較的検出しやすい変異のためデルタ株と区別するのに使っていた国があった。だが、BA.2系統ではこの変異が生じていない。ゆえに「ステルス」であり、BA.2が注目されてこなかった理由の1つかもしれない。

 実は、オミクロン株のBA.1系統とBA.2系統との進化的隔たりは、もとの新型コロナウイルスと最初のVOCであるアルファ株との隔たりよりも大きい。進化遺伝学者でイスラエル、中央ウイルス学研究所の顧問であるシャイ・フレイション氏は、「BA.2にはBA.1と共通の変異が30カ所以上ありますが、独自の変異も28カ所あります」と説明する。

 このことは、BA.1とBA.2の共通の祖先がかなり前から広まっていて、別々の系統に進化した後、たまたまBA.1が先に発見されたことを示唆している。

従来の系統とはどこが違う?

 BA.2系統とBA.1系統の違いの多くは、ウイルスがヒトの細胞に結合して感染するために使うスパイクタンパク質という部分にある。

 デンマーク国立血清研究所が発表した初期の推定では、BA.2の感染力はBA.1より約33%強いとされている。この研究では、12月下旬から1月上旬にかけて8541世帯で新型コロナの家庭内感染の状況を調べた。結果、そのうちの約4分の1がBA.2系統に感染していて、ワクチン接種を済ませた人でもBA.1系統よりもBA.2系統に感染しやすいというデータが示された。なお、この結果は1月30日付けで査読前の論文を投稿する「medRxiv」にも発表されている。

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