火星で「地球では生物にしか作れない」炭素の比率が見つかる

生命の痕跡か、探査車「キュリオシティ」による最新研究

2022.02.02
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キュリオシティが岩石サンプルを採取した火星のゲール・クレーター。(NASA/CALTECH-JPL/MSSS)
キュリオシティが岩石サンプルを採取した火星のゲール・クレーター。(NASA/CALTECH-JPL/MSSS)
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 地球以外の生命を探す科学者たちにとって、火星はますます目が離せない場所になっている。このたび、ゲール・クレーターで活動しているNASAの探査車「キュリオシティ」が、地球であれば生命の証拠とみなされる炭素を含む岩石を発見したという研究結果が発表された。

 1月25日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された論文によると、キュリオシティが複数の岩石サンプルを分析したところ、中に含まれていた炭素の同位体比が極端に偏っていたのだ。

 同位体とは、同じ原子でも原子核に含まれる中性子の数が異なるものをさす。地球の生物は、代謝や光合成を行う際に、中性子数の少ない方、つまり軽い方の炭素を好んで利用する。そのため、軽い炭素の比率が重い炭素よりもはるかに高くなる。

 ゲール・クレーターでも、5カ所から採取された岩石の同位体を分析したところ、火星の大気や隕石と比べて、軽い炭素の比率がずっと高くなっていた。地球では、オーストラリアにあるタンビアナ累層(るいそう)の露出部分に、同様の同位体比が見られる。この累層は27億年前に形成されたもので、メタンを消費する古代の微生物の痕跡が含まれていた。

「大変興味深い結果です。ここまで偏った比率は、地球では生物にしか作れないものです」と、米フロリダ大学の宇宙生物学者エイミー・ウィリアムズ氏は言う。

 しかし、研究を率いた米ペンシルベニア州立大学の宇宙生物学者クリストファー・ハウス氏は、結論までにはまだほど遠いとして、この現象について3つの可能性を挙げている。

 第1に、本当に古代の微生物に由来する可能性。第2に、大昔に太陽系が特異な炭素同位体比を持つ星間雲の中を通過し、その痕跡を火星に残した可能性。実際に、このような雲が存在することは知られている。そして第3の可能性は、紫外線が火星の二酸化炭素の大気と反応してできたというものだ。

「答えはわかりません。生物学的なものかもしれませんし、そうでないかもしれません。3つの可能性は、すべてデータに当てはまります」とハウス氏は語る。

キュリオシティの数々の成果

 キュリオシティは以前から生命の痕跡らしき証拠をいくつも発見している。

 2012年に火星へ着陸して活動を開始すると、キュリオシティは早速ゲール・クレーターで、水によらなければ形成されるはずのない岩石の一帯を発見した。その後も、生命の構成要素となりうる有機分子や、古代に熱水活動があったことを示す証拠などが次々に見つかった。熱水活動のあるところは、地球の生命が誕生した場所の有力な候補のひとつと考えられている。(参考記事:「【解説】火星に複雑な有機物を発見、生命の材料か」

次ページ:地球中心の考え方から抜け出せるか

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