ある年の11月、インドネシアでアラビカ種のコーヒー豆を収穫する生産者。コーヒー、カシューナッツ、アボカドなどの人気食品の多くは南半球の小規模農家で生産されている。最近の研究で、こうした食品の生産に気候変動が及ぼす影響が明らかになった。 (PHOTOGRAPH BY CHAIDEER MAHYUDDIN, AFP VIA GETTY)
ある年の11月、インドネシアでアラビカ種のコーヒー豆を収穫する生産者。コーヒー、カシューナッツ、アボカドなどの人気食品の多くは南半球の小規模農家で生産されている。最近の研究で、こうした食品の生産に気候変動が及ぼす影響が明らかになった。 (PHOTOGRAPH BY CHAIDEER MAHYUDDIN, AFP VIA GETTY)
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 2050年には、世界の農業地図は今とは一変しているかもしれない。

 世界の人口が現在の約80億人から2050年には約100億人まで増える分、食料生産を増やす必要がある。気候変動の影響で、食料の調達先も変わっているはずだ。現時点でも、温暖化の影響で、熱帯の食物がかなり北の地域で生産されるようになっている。例えば、米国ジョージア州で柑橘類が、イタリアのシチリア島でアボカドが栽培されている。いずれも現在の気候区分ではまだ温帯だ。

「パソコンで『気候変動』という単語と、あなたの好きな食品の名前を並べて検索してみてください。半分ぐらいの確率で、気候変動がその食品の生産に影響を及ぼしているという記事が出てきます」と、2021年に『Our Changing Menu(変わりゆくメニュー)』という本を出版したマイケル・ホフマン氏は言う。

 2022年1月26日付けで学術誌「PLOS ONE」に発表された論文は、コーヒー、カシューナッツ、アボカドという3種類の人気食品の栽培環境が今後30年間にどのように変化するかをモデル化した。気候変動がカシューナッツやアボカドの生産地に及ぼす影響についての研究は、これが世界初だ。

 3種類の作物のうち、温暖化によって最も大きな打撃を受けるのはコーヒーだった。論文では、コーヒーを栽培できる地域が2050年までに全世界では減ると予想されている。カシューナッツとアボカドについては、より複雑な結果となった。一部の栽培地域では収穫量が減少する一方で、米国南部などでは栽培に適した土地が増える可能性が高いという。

 気候変動がコーヒー豆に有害な影響を与えることは過去の研究でも示されているが、今回の研究はそれを発展させた。この研究では、降雨量の増加による土壌のpH(酸性度)や質の変化などの要因に広く着目し、収穫量の減少につながる証拠をより多く示している。

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 多くの土地では気候の変化に合わせて栽培を続けられるだろうと、論文の筆頭著者でスイス、チューリッヒ大学の環境科学者ロマン・グリューター氏は言う。科学者と農家はすでに、気候変動に耐えられる丈夫な作物をつくる交配実験を進めている。米国ジョージア州やシチリア島のように、まったく新しい種類の作物の栽培を始めた地域もある。しかし今回の研究は、それだけでは十分でない可能性があると警告している。(参考記事:「農作物をよりタフに、世界で野生種探し活用へ」

「従来の栽培地域ではその作物を育てられなくなる日がくるかもしれません」とグリューター氏は言う。(参考記事:「中南米のコーヒー生産を脅かす「さび菌」と気候変動」

次ページ:温暖化で栽培に適した地域が変わる

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