性感染症がコロナ禍でより広まった可能性、どういうこと?

警戒強める専門家ら、クラミジアや淋病、梅毒の米国の調査結果と現状から

2022.01.28
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 シアトル市とキング郡のエイズ・性感染症プログラムでも、職員の多くが新型コロナ対応に回されていたと、ドンブロウスキー氏は言う。そのため、米国の他の多くの保健所や診療所と同様、「たちまち、症状がある患者や、即日治療が必要な患者を優先させるようになりました」と言う。しまいには、無症状者の検査を完全にやめてしまったという。2019年4月には990人の患者を診察していたが、1年後、その数は399人に減っていた。

 ワシントンD.C.にある診療センター「ウィットマン・ウォーカー・ヘルス」の性健康部長であり、ナース・プラクティショナー(一定レベルの診療と薬の処方ができる看護師)のアマンダ・ケアリー氏は、以前なら予約なしの診療や検査を求める患者で待合室がいっぱいだったが、パンデミック中は完全予約制にしていたという。ウィットマン・ウォーカー・ヘルスが提供したデータによると、同センターでは2020年に、クラミジア、淋病、梅毒の検査数が2019年と比較して累積で43%減少した。

 もう一つ、診療所が直面した問題は、検査キットの不足だった。CDCが資金を出している59の性感染症プログラムを対象に調査を行ったところ、2020年4月に回答した施設のうち51%が、淋病とクラミジアの検査キットが不足していると答えていた。CDCはその後も回答を集めていたが、翌2021年1月までの結果を見ても、38%がキット不足を訴えていた。論文は2021年10月21日付けで医学誌「Sexually Transmitted Diseases」に発表された。

 バン・デル・ポル氏によると、性感染症の検査には、検体を採取する綿棒など、新型コロナの検査と同じものが多く使われているという。

 そもそも検査自体も、性感染症から新型コロナのPCR検査や抗原検査に取って代わられ、検査機関の人手がそちらに奪われた。年間約2万件にのぼる性感染症の検査を実施してきたバン・デル・ポル氏の性感染症診断検査室は、2020年に検査件数が2倍に増えたものの、性感染症の検査は1件も行われなかった。

今後は性感染症の増加が確実視

 診療所も検査機関も、最近になってようやくパンデミック前の検査体制に戻りつつあり、予約なしの患者を受け入れるところも増えている。この記事のために取材した診療所や検査機関は現在、それぞれ通常の70~80%の稼働率で対応している(1日ずつ見れば、まだ完全に元通りと言うわけにはいかない。バン・デル・ポル氏は、いまだに漂白剤や手袋といった最も基本的な消耗品も手に入りにくいという)。

 しかし、多くの専門家は、事態は深刻なことになっているのではないかと懸念する。ピント氏の研究では、2020年の3月から2020年6月までの間に見逃された性感染症の症例は15万件を超えると見積もられている。

 性感染症とHIVの検査を実施しているロサンゼルスLGBTセンターの主任疫学者であるニコール・カニンガム氏は、パンデミック当初に感染者数は減ったが、今ではすべての性感染症で増えていると話す。2021年6月には、2019年とほぼ同じ数の検査を実施し始めたところ、6月から10月の間に、淋病の累積感染者数は2019年の同じ時期と比べて23.8%増加していた。

 パンデミックの影響のせいで、実際の増加率を特定するのは難しい。症例が増えたのは、2020年に検査できなかった分が今になって処理されたからなのか、それとも実際に感染が拡大しているのかはわからない。

「性感染症に関しては、実際に何が起こっているのかを理解するのはまだ難しいです。パンデミックの前から陽性者は毎年増え続けていましたから、パンデミックがなかったとしてもある程度は増えていたでしょう」と、ドンブロウスキー氏は言う。

 だが、検査数が減ったこと、そして、無症状者を見逃していたことが、感染拡大につながったのはほぼ間違いないだろうともいう。そして同氏は、多くの専門家が、今後数カ月間で性感染症の感染者数の大幅な増加を予測していると付け加えた。

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文=JILLIAN KRAMER/訳=ルーバー荒井ハンナ

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