米国のトウモロコシ、主に気候変動で収穫増、遺伝子技術ではなく

現状は「長くは続きません」と研究者、遺伝子技術への期待に警鐘

2022.01.27
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米国ネブラスカ州インペリアル近郊の農場で、嵐の雲が押し寄せる前に、山と積まれたトウモロコシの密封貯蔵作業を進めるトラクター。(PHOTOGRAPH BY RANDY OLSON, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
米国ネブラスカ州インペリアル近郊の農場で、嵐の雲が押し寄せる前に、山と積まれたトウモロコシの密封貯蔵作業を進めるトラクター。(PHOTOGRAPH BY RANDY OLSON, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 米国中部のインディアナ州からネブラスカ州にかけて広がるコーンベルト地帯では、世界の3分の1以上のトウモロコシが作られている。1880年代と比べて、土地の広さは2倍程度であるにもかかわらず、生産量は20倍を超えた。ここでは、現代の科学がもたらすさまざまな驚異が繰り広げられている。

 過去の例を鑑みると、こうした収穫量の増加は、農法の改善と品種改良によるところが大きかった。一方で最近の数十年間において、収穫を大幅に増加させた主な要因は、遺伝子を正確に操作できる遺伝子工学技術だと考えられてきた。現在、米国の農作物の大半に、何らかの形で遺伝子技術が使われている。

 ところが、1月25日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された論文によると、過去15年間にトウモロコシの収穫量を増加させてきた主な要因はまるで異なるものだったという。それは、気候変動によって長くなった成長期と温暖な天候だ。

 これは必ずしも良いことではないと、科学者は警告する。まず、世界の温暖化の進行に伴って、コーンベルトの環境がトウモロコシに適さなくなり、収穫量の増加が見込めなくなる可能性がある。

 さらに深刻な問題は、科学者たちが、将来的に収穫量を増やすうえでの重要な手段として、遺伝子工学に期待を寄せてきた点だ。増え続ける人口のために十分な食料を生産し続けなければならない世界にとって、収穫量の増加という課題は避けて通れない。今回の研究は、コーンベルトにおいては、遺伝子工学というツールがこれまで考えられてきたほど有用なものではなかったことを示唆している。

「収穫量を維持するためには、真に独創的な発想が必要となります」とネブラスカ大学リンカーン校の農業科学者で、今回の論文の著者のひとりであるパトリシオ・グラッシーニ氏は言う。

コーンベルト成功の歴史と理由

 1930年代以降、トウモロコシの生産量は着実に増加してきた。これは、膨大な科学的リソースが収穫量向上のために注ぎ込まれてきた結果であり、作物の収穫量と生産性は理論的限界に向けて伸び続けてきた。

 生産者は、より狭い土地により多くの苗を植え、肥料を使うタイミングを微調整し、輪作を行って土壌を健やかに保つことを学んできた。育種家たちは、密集した状態で育てられたり、葉を太陽の方に向けたり、より早い時期に成熟したりする品種を開発した。

次ページ:1990年代から遺伝子技術と気候変動が同時進行

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