トンガ噴火は「桁外れに奇妙」、異常な巨大津波、少ない火山灰

予想よりはるかに複雑な歴史が明らかになるも、深まる謎

2022.01.24
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立ちのぼる噴煙の中、1分あたり5000~6000回という記録的な頻度で火山雷が発生した1月14日の様子。(PHOTOGRAPH BY TONGA GEOLOGICAL SERVICES, REUTERS)
立ちのぼる噴煙の中、1分あたり5000~6000回という記録的な頻度で火山雷が発生した1月14日の様子。(PHOTOGRAPH BY TONGA GEOLOGICAL SERVICES, REUTERS)

 トンガの首都ヌクアロファの北約65キロメートルに位置する海底火山フンガトンガ・フンガハアパイは、もともとは山頂の一部だけを海面から覗かせていた細長い2つの小さな島で、フンガトンガ島とフンガハアパイ島と呼ばれていた。2014年の噴火で第3の島ができると、やがて、3つの島がつながって1つになった。2021年12月の噴火では、噴出した火山岩と火山灰によって新たな土地が生まれ、島は徐々に大きくなっていった。

 そして2022年1月15日の大噴火となった。衛星写真で見ると、巨大火山はほぼ完全に海中に没し、見えているのは2つの小さな岩礁だけになった。しかし、数週間後か数年後には、火山は再び隆起するはずだ。

 フンガトンガ・フンガハアパイのような火山は、このような破壊と再生のサイクルを繰り返している。とはいえ、ここまでの規模の噴火は、過去数十年では発生していない。あくまで初期の推定としつつ、NASAは今回の爆発のエネルギーを、TNT火薬500万〜3000万トン相当と発表した。1980年の米セントヘレンズ山の大噴火が2400万トン、1883年のインドネシア、クラカタウ山の大噴火が2億トン相当だった。

2021年12月12日に撮影された、フンガトンガ・フンガハアパイ火山の山頂にあたる島の衛星画像。(PHOTOGRAPHS BY MAXAR VIA GETTY IMAGES)
2021年12月12日に撮影された、フンガトンガ・フンガハアパイ火山の山頂にあたる島の衛星画像。(PHOTOGRAPHS BY MAXAR VIA GETTY IMAGES)
2021年12月に始まった噴火によって島は徐々に大きくなり、2022年1月6日にはこのような姿になっていた。その後、1月14日と15日の噴火で、島の大半が吹き飛ばされた。(PHOTOGRAPHS BY MAXAR VIA GETTY IMAGES)
2021年12月に始まった噴火によって島は徐々に大きくなり、2022年1月6日にはこのような姿になっていた。その後、1月14日と15日の噴火で、島の大半が吹き飛ばされた。(PHOTOGRAPHS BY MAXAR VIA GETTY IMAGES)

 今回の噴火によって、太平洋全域で津波が発生し、ソニックブーム(衝撃波音)は地球を2周した。火山灰と火山ガスからなる噴煙は高度約30kmの成層圏に達し、一部は高度55kmまで到達した。最も注目すべきは、これら諸々の影響が、わずか1時間ほどの火山活動からもたらされたことである。

 米スミソニアン協会のグローバル火山活動プログラムの火山学者ジャニーヌ・クリップナー氏は、「今回の噴火は、すべてが桁外れに奇妙です」と言う。

速く巨大な波の謎

 今回の噴火では、その規模に比べて噴出物の量が驚くほど少なかった。ニュージーランド、ビクトリア大学ウェリントンの火山学者で、フンガトンガ・フンガハアパイの歴史を研究するサイモン・バーカー氏によると、この火山の過去の大噴火によって噴出した火山灰の層は、近くのトンガタプ島で見ることができるが、その層は今回の噴火によって新たに堆積した層の10倍も厚いという。

津波により大きな被害を受けたノムカ島の1月17日の様子。色鮮やかな熱帯の植物が生い茂るトンガの島々は、今、火山灰に覆われて色彩を失っている。(PHOTOGRAPH BY NEW ZEALAND DEFENSE FORCE VIA GETTY IMAGES)
津波により大きな被害を受けたノムカ島の1月17日の様子。色鮮やかな熱帯の植物が生い茂るトンガの島々は、今、火山灰に覆われて色彩を失っている。(PHOTOGRAPH BY NEW ZEALAND DEFENSE FORCE VIA GETTY IMAGES)

 また一部の科学者は、巨大だが短時間の噴火が、異常に大きな津波を引き起こしたのではないかと推測している。

 津波は通常、海底火山の噴火に伴う海底地滑りや、地震に伴う地盤の急激な動きなど、海に沈んだ部分の急激な変化によって発生する。しかし、フンガトンガ・フンガハアパイの噴火後、カリブ海をはじめとする一部の地域では、通常の津波よりもはるかに早く波が押し寄せた。

 遠方の海岸に後から押し寄せた津波も奇妙だった。通常の津波は、発生源から遠ざかるほど小さくなる。しかし、トンガに大きな被害をもたらしたものの、海の向こうの国々に到達した波の大きさを説明できるほどには、トンガに押し寄せた津波は高くなかったのだ。

「今回の津波は、太平洋全域での減衰が非常に少なかったのです。これは本当に珍しいことです」と、ニュージーランドの研究機関、GNSサイエンスの火山学者であるジェフ・キルガー氏は言う。

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