万能コロナワクチンは完成間近か、成果続々、治験に進んだものも

オミクロン株は最後の変異株ではないと専門家、ナノ粒子を使った研究が加速

2022.01.21
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新型コロナウイルス「スパイクフェリチンナノ粒子(SpFN)」ワクチンの電子顕微鏡画像。あらゆる変異株に効くことを目指して開発された。(PHOTOGRAPH BY WALTER REED ARMY INSTITUTE OF RESEARCH)
新型コロナウイルス「スパイクフェリチンナノ粒子(SpFN)」ワクチンの電子顕微鏡画像。あらゆる変異株に効くことを目指して開発された。(PHOTOGRAPH BY WALTER REED ARMY INSTITUTE OF RESEARCH)
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 新型コロナウイルスのオミクロン株は、最初に確認されてからわずか1カ月ほどで全世界に広がった。新たな変異株が登場するたびに、製薬会社はこれまでの「レシピ」で作られた自社のワクチンや治療薬に効果があるかどうかを再検討している。

 2021年12月、ワクチンメーカー各社は、必要ならば新型コロナワクチンを微調整してオミクロン株に特化したワクチンを作ると表明した。(参考記事:「オミクロン株に備え、コロナワクチンの改良が急加速」

 2019年12月にパンデミック(世界的大流行)が始まって以来、新型コロナウイルスは何度も変異し、さまざまな変異株が誕生している。大半のワクチンは、変異前のウイルス(従来株)のスパイクたんぱく質か、少なくともその一部を認識するように設計されているため、オミクロン株のような多くの変異をもつ変異株に対する効果は低くなる(ただし、重症化を防ぐ効果はある)。

「しかし、オミクロン株は最後の変異株にはならないでしょう」と、米バージニア大学医療センターの感染症専門医スティーブン・ザイクナー氏は指摘する。「このウイルスが今後も進化し続けることは明らかで、すべての新型コロナウイルスに効くユニバーサル(万能)新型コロナワクチンか、さらに言えば、どんなコロナウイルスにも効く万能コロナワクチンが必要です」

 専門家は、次の致死的なコロナウイルスによるアウトブレイク(集団感染)が発生するのは時間の問題だと考えており、一部の科学者たちは2020年から、複数のコロナウイルスに効果のあるワクチンの開発を始めている。現在、SARS-CoV(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)やSARS-CoV-2(いわゆる新型コロナウイルス)などの既知のサルベコウイルス亜属(新型コロナウイルスが属するグループ)と、コウモリからヒトに感染する可能性のあるSARS様ウイルスに焦点を当てた研究が多く行われている。

 動物モデルを用いた初期段階の検証では、有望な結果が出ている。「万能ワクチンができれば、(新型コロナウイルスの)新しい変異株だけでなく、次に動物からヒトに飛び移ってくるスピルオーバー(異種間伝播)ウイルスにも対処できます」と、いくつかのSARS様ウイルスに効く万能ワクチンの開発を進めている米カリフォルニア工科大学の構造生物学者パメラ・ビョークマン氏は説明する。(参考記事:「また新たなコロナが発生するリスクの高い場所は? 研究」

新たなコロナウイルスの出現

 2021年11月26日に世界保健機関(WHO)が「懸念される変異株(VOC)」に分類したオミクロン株には、従来株と比較して約50カ所の変異があり、そのうち36カ所はスパイクたんぱく質にある。スパイクたんぱく質は、ウイルスの表面から突き出た棍棒状のたんぱく質であり、ウイルスが宿主細胞に侵入する際に重要な役割を果たす。また、新型コロナワクチンが感染や重症化を防ぐために標的としている領域でもある。

 ヒトコロナウイルスは1960年代半ばに初めて同定されたが、重篤な病気を引き起こすことはまれだった。だが2002年に状況が変わった。洞窟に生息するコウモリに関連した新しいコロナウイルス「SARS-CoV」による致死的な呼吸器疾患が中国で発生して29カ国に広がり、8000人近くが感染し、700人以上が死亡したのだ。

 その10年後の2012年には、コウモリに由来すると推定されている別の新しいコロナウイルス「MERS-CoV」がサウジアラビアで出現して37カ国に広がり、2000人以上が感染し、これまでに900人近い死者を出している(編注:ヒトへの感染源はヒトコブラクダだと考えられている)。

 動物由来のコロナウイルスがもたらす危険性は、2019年末に出現した新型コロナウイルスによっていっそう明白になった。これまでに全世界で約3億4000万人が感染し、550万人以上が死亡している。

 MERSやSARSに対するワクチンの開発と検証は、目先の利益を優先する考え方と限られた予算によってなかなか進まなかった。だが、非営利の官民連携パートナーシップ「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」による2億ドル(約230億円)のプログラムや、米国立衛生研究所(NIH)の3630万ドル(約41億円)の研究助成金をはじめとする近年の投資によって、少なくとも万能新型コロナワクチンは、多くの人が想像するより早く実現するかもしれない。

次ページ:治験に進んだワクチン候補

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