済州島「クリスマスツリーの森」が温暖化で危機に、絶滅危惧種

韓国最高峰漢拏山に自生するチョウセンシラベ、20年でほぼ半分が枯死

2021.01.04
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韓国、済州島の漢拏山(ハルラサン)に自生するチョウセンシラベ(Abies koreana)。韓国の人々はクリスマスになると養樹場で栽培されたチョウセンシラベを購入し、家に飾る。野生ではこの木は成長が遅く、気候変動の影響で絶滅の危機にさらされている。(PHOTOGRAPH BY KIM JIN)
韓国、済州島の漢拏山(ハルラサン)に自生するチョウセンシラベ(Abies koreana)。韓国の人々はクリスマスになると養樹場で栽培されたチョウセンシラベを購入し、家に飾る。野生ではこの木は成長が遅く、気候変動の影響で絶滅の危機にさらされている。(PHOTOGRAPH BY KIM JIN)

 朝鮮半島の南およそ100kmに浮かぶ韓国の済州島には、同国の最高峰、漢拏山(ハルラサン)がある。その高地にはチョウセンシラベ(Abies koreana)というモミの木の小規模な群落があり、「クリスマスツリーの森」と呼ばれている。この常緑の針葉樹は、世界中の家庭で冬に飾られるヨーロッパモミやオウシュウトウヒ(ドイツトウヒ)などによく似ていて、韓国の人々はクリスマスツリーにしている。

 チョウセンシラベは韓国にしか自生しておらず、特に南部に多い。最大の群落があるのが済州島だ。チョウセンシラベはモミ属の樹木としては小さく、他の種類のモミが樹高90m以上に達することもあるのに対して、9~18m程度にしかならない。また、主に亜高山帯で生育するため成長が遅く、成熟までに約30年を要し、わずか樹高1mほどで球果をつける。

チョウセンシラベの若い球果。チョウセンシラベは樹高1mほどになると球果をつけ始める。(PHOTOGRAPH BY KIM JIN)
チョウセンシラベの若い球果。チョウセンシラベは樹高1mほどになると球果をつけ始める。(PHOTOGRAPH BY KIM JIN)

「ほとんどのモミは、寿命がもっと長く、もっと寒い地域で生育しています」と韓国森林研究所の元分析官キム・チャンス氏は説明する。チョウセンシラベは色にも特徴がある。「色合いが非常にユニークなのです。葉の裏が白いので、完全な緑色ではありません。青に近い色に見えます」

 韓国では人口の約3割がキリスト教徒だが、クリスマスツリーが一般的になったのはつい最近のことだ。第2次世界大戦後まもなく12月25日が聖誕節として国民の祝日となって以来、クリスマスを祝う習慣が定着した。(参考記事:「クリスマスツリーの歴史 いつ、どこで生まれたのか?」

 加えて2020年は新型コロナ対策の外出規制を受け、室内に植物を置いたり飾り付けをしたりする人が増えた。夏には韓国政府が自己隔離者を対象に「伴侶植物」を配布して、精神衛生上のストレスを軽減しようとしたほどだ。この冬は、室内に樹木を飾って休日の雰囲気を演出しようとする人が増えている。

チョウセンシラベの実生の2年苗。(PHOTOGRAPH BY KIM JIN)
チョウセンシラベの実生の2年苗。(PHOTOGRAPH BY KIM JIN)

 韓国のアルバイト求人アプリ「アルバコール」が実施したアンケート調査では、約1000人の回答者の48.6%が自宅にクリスマスツリーを飾ると回答した。かつて韓国では生木のクリスマスツリーは珍しかったが、養樹場でチョウセンシラベが栽培されるようになったため、ネット通販で広く購入できるようになった。

 しかし、済州島の「クリスマスツリーの森」は危機に直面している。ツリーのために伐採されたからではない。気候変動のせいで、過去20年間で野生のチョウセンシラベのほぼ半分が枯死したのだ。

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