ラフレシアは自生地の熱帯雨林以外で栽培するのが難しく、絶滅の危機に瀕している。(PHOTOGRAPH BY FRANS LANTING, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 ラフレシアは、世界で最も奇妙な花かもしれない。

 その一生は、小さな種子がミツバカズラというブドウ科のつる植物に寄生することから始まる。数カ月から数年後(厳密な期間は誰も知らない)、ミツバカズラの樹皮からこぶのようなラフレシアの花芽が出てくると、ゴルフボールほどの大きさから、やがてキャベツのような大きさへと膨らんでいく。そしてついに、血のように赤く、腐った肉のような悪臭を放つ巨大な花を咲かせる。(参考記事:「【動画】驚き!花々のタイムラプス 5選」

 だが、ラフレシアの未来は気がかりだ。ラフレシア属の植物は東南アジアの熱帯雨林にのみ自生し、約30種が知られている。ところがいくつかの種は、生息地の破壊や怪しげな薬効を期待する違法採取に脅かされ、絶滅の危機にさらされているのだ。

 寄生植物であるラフレシアは、宿主を圧倒しない程度に個体数を制限していると、インドネシアのジャワ島にあるボゴール植物園の植物学者ソフィ・ムルシダワティ氏は語る。しかし、人間からの圧力でその存在が危ぶまれる中、ラフレシアのこの性質が、みずからの生き残りを困難にしている。

 動物が絶滅の危機に瀕したときには、自然保護活動家たちは最後に残った個体を保護して、飼育下で繁殖させようとする。ムルシダワティ氏は、ラフレシアが自生する熱帯雨林から遠く離れた場所で、この花を確実に栽培することに初めて成功した。彼女は、この自然の驚異が姿を消してしまう前に自分の技術を広く伝え、その謎を解き明かすのに役立ちたいと考えている。

巨大でくさい、そして根も葉もない

 ラフレシア属の植物は、信じられないほど奇妙である。ムルシダワティ氏が最初に挙げるのは、その花の途方もない大きさだ。単独の花としては世界最大で、直径1メートルを超えるものがいくつか報告されている。

 そして、くさい。いわく言いがたいラフレシアの臭いは、授粉を担うクロバエにとってはたまらない誘惑だが、ほとんどの人間にとっては耐えがたいほど不快である。といっても巨大な花が悪臭を放つ植物はラフレシアだけではなく、アジア、アフリカ、オーストラリアに分布するコンニャク属の植物も「死体花」の別名をもつ。(参考記事:「世界最大級の臭い花がシカゴで開花、大人気に」

ラフレシアに授粉するクロバエ。クロバエは、この花に引きつけられる数少ない生物の1つである。(PHOTOGRAPHS BY FRANS LANTING, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
ラフレシアに授粉するクロバエ。クロバエは、この花に引きつけられる数少ない生物の1つである。(PHOTOGRAPHS BY FRANS LANTING, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
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 さらに奇妙なことに、植物学的な定義からは、ラフレシアはほとんど植物とは呼べない。ラフレシアには茎も根も葉もなく、何百万年も前に光合成のための遺伝子を捨ててしまっているため、完全に宿主に頼って生きている。

「パズルはますます複雑になっています」と、2014年にラフレシアから欠失している遺伝子を突き止めた米ロングアイランド大学ブルックリン校の植物生物学者ジャンメール・モリーナ氏は語る。「ラフレシアを保全するどころか、調べることさえ非常に困難なのです」

 この寄生植物の複雑なライフサイクルと謎めいた生態は、絶滅の危機から救おうとする科学者たちを苦しめている。

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