人間とイヌの絆

 競技中、イヌはルアーと呼ばれる疑似餌を追いかける。飼い主は多くの場合ゴールで応援する。このような関係は数千年という時間の中で形成されたと、米デューク大学でイヌ科動物の認知に関する研究を行っているブライアン・ヘア氏がメールで教えてくれた。

「イヌには人間のボディーランゲージ、つまり互いの協力があってこそ伝えられる意図を、ほかの動物にはできない方法で理解する特別な能力があります。これは人類に最も近い近縁種である大型類人猿にもできないことです」と、イヌの進化と行動に関する著書もあるヘア氏は述べている。(参考記事:「飼い主の感情は犬に「伝染」する、どうやって?」

 4万年もの昔、現在のドイツやシベリアにいたオオカミが、人間の集落の近くをうろうろするようになった。最初は残飯が目当てだった。そのうちに人なつっこく、あまり警戒心のないオオカミが人間と関係を築き、狩りを手伝ったり家の守りをしたりするようになった。長い間に、このようなオオカミが飼い慣らされて現在のイヌになり、今日知られているような多くの犬種が生まれた。(参考記事:「イヌへの進化のきっかけ 人と遊ぶオオカミだった?」

 長い時間をかけて作り上げられたこの関係があるため、イヌを訓練するのは、ネコのようなほかの動物の場合より易しい(全米最速猫競技会のようなイベントがあれば、それはそれで面白いかもしないが)。

 とは言え、人間と同様、イヌにもそれぞれの個性や向き不向きがある。イベントに参加させたい飼い主は、いろいろな活動に関心を持つとよいだろうとヘア氏は言う。

「イヌの心も、人の心と一緒です」と氏は主張する。「人によって認知しやすいことと、しづらいことがあります。また何かが得意だからといって、何でもできるわけではありません」

 使役犬を考えると、仕事の種類によって必要とされる認知技能が異なることがよくわかるだろう。

「車いすを引くイヌには、自制のような認知能力や、相手の意図を理解する能力が必要かもしれません。一方で盲導犬は、例えば飼い主が交通量の多い通りを横切ろうとしたときは、命令に従うべきでないことも理解する必要があります」とヘア氏は説明する。

最速のピンシャー

 犬種最速犬部門で優勝したのは、ジャーマンピンシャーの「オットー」。タイムは時速43キロだった。

犬種最速犬になったのは、ジャーマンピンシャーのオットー。(Photograph by Stephen Faucher/MLBaer Photography)
犬種最速犬になったのは、ジャーマンピンシャーのオットー。(Photograph by Stephen Faucher/MLBaer Photography)
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 ジャーマンピンシャーは、ドイツ最古の犬種のひとつで、見た目はまるで小さなドーベルマンピンシャーだ。

「オットーを買ったのは、当時病気の末期にあった父のコンパニオンとしてでした」と言うのは、バージニア州に住む飼い主のメレディス・クラウスさん。父親が亡くなった後、オットーを自分のイヌにし、「大変な才能があることに気づきました」と話す。

 今回の優勝レースは、ちょうどオットーの引退試合だった。ご褒美に、夕食はステーキにするそうだ。

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文=Liz Langley/訳=山内百合子