世界保健機関(WHO)によれば、11月に南アフリカで初めて検出されたオミクロン株は、12月16日時点ですでに89カ国で報告されている。また、米疾病対策センター(CDC)の20日時点の推計では、18日までの1週間における米国の新規感染者のうち、オミクロン株の割合は73.2%になり、前週の12.6%から一気に跳ねあがった。
英ロンドンでも現在、オミクロン株が陽性診断例の過半数を占め、南アフリカでは完全に主流となっている。(参考記事:「英国でオミクロン株の死者、現行のワクチンと治療薬は効くのか」)
新型コロナウイルスのオミクロン株が急速に広がる中、すべての変異株に対する最善の防御策は、規定回数のワクチン接種の数カ月後に追加接種(ブースター接種)を受けることだと専門家は述べている。
徐々に弱まるワクチンの効果
CDCが米国内の2021年4月4日〜7月17日のデータを分析したところ、ワクチン未接種の人は完全接種済みの人に比べて、新型コロナに感染するリスクが5倍、入院または死亡するリスクが10倍であることがわかっている。
しかし、イスラエルと米国での研究により、ワクチンによる新型コロナウイルスへの免疫は6〜8カ月で弱まることも明らかになった。より感染力の強いオミクロン株にさらされる人々が増える中では、ワクチンの効果の低下は特に懸念される。
それでも、ブースター接種で中和抗体の量をピーク値付近まで回復させれば、オミクロン株に対してより強力な防御となる。
「ワクチンはあなたを保護し、少なくとも死亡を防いでくれます」と、南アフリカ以外で初めてオミクロン株を検出した研究者の一人である香港大学のウイルス学者、潘烈文(レオ・プーン)氏は話す。「オミクロンであれデルタであれ、ブースターを受けることは有益です」
「少なくともブースターは70%程度、予防してくれます」と言うのは、米ベイラー医科大学の小児科医でワクチン学者のピーター・ホテズ氏だ。査読前の医学論文を投稿するサイト「medRxiv」で12日14日に公開された英国健康安全保障庁の暫定的な評価では、11月27日から12月6日に実施された検査において、ファイザー製のワクチンを3回接種したときの発症予防効果は75.5%まで回復していた。
次ページ:「変異株に特化したブースターを受ける必要はありません」
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