世界遺産:ルネサンスの幕開けの象徴、パドバの14世紀フレスコ画

システィーナ礼拝堂と並ぶルネサンスのマイルストーン、イタリア

2021.12.26
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1305年にジョットが完成させたイタリア、パドバのスクロベーニ礼拝堂のフレスコ画は、中世の伝統芸術を覆し、イタリア・ルネサンスの舞台となった。2021年、ジョットの傑作を含むパドバの14世紀フレスコ画群がユネスコ世界遺産に登録された。(PHOTOGRAPH BY GÜNTER STANDL/LAIF/REDUX)
1305年にジョットが完成させたイタリア、パドバのスクロベーニ礼拝堂のフレスコ画は、中世の伝統芸術を覆し、イタリア・ルネサンスの舞台となった。2021年、ジョットの傑作を含むパドバの14世紀フレスコ画群がユネスコ世界遺産に登録された。(PHOTOGRAPH BY GÜNTER STANDL/LAIF/REDUX)
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 イタリア、パドバにあるスクロベーニ礼拝堂の天井を見上げるとき、多くの人は不意に言葉を失う。そこに広がるのは、ルネサンス期の画家ジョット・ディ・ボンドーネが描き出した、黄金の星々と魅惑の天国の青い空だ。そして、フレスコ画の壁に目を向ければ、クリスマスの季節にふさわしい崇高な物語が描かれている。

 マリアとイエスの生涯を描いたこのフレスコ画は1305年に公開され、そのスタイルは西洋美術界に革命を起こした。「ジョットのスクロベーニ礼拝堂は、ルネサンスの始まりを象徴するものです」。ツアーガイドで美術史家のチェチリア・マルティーニ氏はそう語る。「この200年後にミケランジェロが手がけたシスティーナ礼拝堂は、ルネッサンスのクライマックスだと言えます。これを本当に理解するには、スクロベーニ礼拝堂の壁画を見る必要があるのです。この2つがルネッサンスにおけるマイルストーンです」

 しかし、ローマのシスティーナ礼拝堂が年間700万人の観光客を集めるのに対し、力強くもシンプルなパドバのスクロベーニ礼拝堂は、最近になってようやく旅行者が訪れるようになった場所だ。観光地化されたベネツィアから電車で30分、パドバの旧市街地はジョットの影響を色濃く残している。14世紀、ジョットのフレスコ画が大きな反響を呼び、ジョットに倣う芸術家たちが集まって教会や一般建築に絵を施したことから、パドバは「ウルブス・ピクタ(絵のある町)」と呼ばれるようになった。

 7月、ユネスコはパドバの14世紀のフレスコ画作品群を世界遺産に登録した。スクロベーニ礼拝堂を含む歴史的中心部にある8つの建造物が、「この街の新しいイメージを誕生させた」としている。

「ユネスコの登録によってパドバを訪れる観光客が増え、見過ごされがちな場所を知ってもらうことができました」。ユネスコ登録に尽力したパドバ市主導の「パドバ・ウルブス・ピクタ」のマネージャー、フェデリカ・ミロッツィ氏はそう語る。同団体は旅行者向けに、全てのフレスコ画を鑑賞できるチケットと、芸術を深く探求するためのアプリを提供している。

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高利貸し一族の償い

 世界遺産登録されたフレスコ画で最も人気があるのは、13世紀の建造開始以来、巡礼地として知られるパドバの聖アントニオ聖堂のものだ。ジョットがパドバで最初に依頼を受けた作品で、裕福な銀行家エンリコ・スクロベーニが、一族の礼拝堂に描かせるためにジョットを雇った。

パドバの聖アントニオ大聖堂は世界最大級の教会で、毎年500万人以上の旅行者が訪れる。この建物のフレスコ画はジョットがパドバで最初に依頼されたものだ。(PHOTOGRAPH BY LEONARDO SANDON, ISTOCKPHOTO/GETTY IMAGES)
パドバの聖アントニオ大聖堂は世界最大級の教会で、毎年500万人以上の旅行者が訪れる。この建物のフレスコ画はジョットがパドバで最初に依頼されたものだ。(PHOTOGRAPH BY LEONARDO SANDON, ISTOCKPHOTO/GETTY IMAGES)
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 エンリコはスクロベーニ家の評判を回復させるために、当時最も有名な画家だったジョットを雇ったと考えられている。エンリコの父、レジナルドは悪名高い高利貸しで、教会から軽蔑され、カトリック式の埋葬を拒否された。ダンテは『神曲』の「地獄篇」で第七圏にレジナルドを登場させ、永遠に熱い砂の上に座らせた。

次ページ:対照的なエンリコとジョットのその後

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