戻ってきた海鳥パフィン、温暖化が新たな脅威に、米東部メーン湾

2021年夏の繁殖成績は「悲惨」、大雨で卵は窒息、魚が変わり餌不足に

2021.12.27
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米国東部メーン湾のパフィンは、狩猟によって1800年代後半には姿を消してしまった。だが1970年代に始まった熱心な取り組みの結果、マスコンガス湾のイースタン・エッグロック島に180組のペアが生息する群生地が復活した。(PHPOTOGRAPH BY BRIAN SKERRY)
米国東部メーン湾のパフィンは、狩猟によって1800年代後半には姿を消してしまった。だが1970年代に始まった熱心な取り組みの結果、マスコンガス湾のイースタン・エッグロック島に180組のペアが生息する群生地が復活した。(PHPOTOGRAPH BY BRIAN SKERRY)
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 米国東部メーン州の「メーン湾ではさまざまな変化が起きていますが、それを私たちに教えてくれるのはパフィンなのです」と話すのは、全米オーデュボン協会海鳥研究所の保全科学責任者で、同協会の「プロジェクト・パフィン」のリーダーを務めるドナルド・ライオンズ氏だ。

 プロジェクト・パフィンの取り組みは数十年に及ぶ。パフィン(ニシツノメドリ)だけでなく、ウミガラス、アジサシ、ウミツバメなどの海鳥の群れを、メーン湾のイースタン・エッグロック島、マティニカス・ロック島、シール島に復活させることがねらいだ。

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 パフィンはハンターや卵収集者に狙われ、1800年代後半には島々から姿を消していた。復活の取り組みは1970年代前半、カナダのニューファンドランド州(当時)の島から数羽のヒナをイースタン・エッグロック島に移入することから始まった。現在では、この約3ヘクタールの島におよそ180組のペアが営巣するまでになった。

 しかし、目覚ましい復活を遂げたパフィンたちに今、新たな脅威が迫っている。

 例年ならパフィンのヒナの3分の2が巣立つが、2021年は、イースタン・エッグロック島や他の島々ではヒナの4分の1から3分の1しか巣立ちを迎えることができなかった。ライオンズ氏によれば、この夏のパフィンの繁殖成績は「驚くほど低調」だった。2019年は「非常に好調」だったが、「2020年はぎりぎりの成績で、今年は悲惨でした」

 気候変動がもたらした海水温上昇の影響や、パフィンが好む魚の乱獲による餌の不足がその原因だと、ライオンズ氏は考えている。

【動画】「プロジェクト・パフィン」では、面積3ヘクタールのイースタン・エッグロック島にカナダのニューファンドランドからパフィンのヒナが移入された。生涯の大半を海で過ごすパフィンの成鳥がこの島を恒久的な繁殖地とするまでには数年を要した。(STEVE DE NEEF)
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魚が変わり、餌が足りない

 海水温の上昇によって、パフィンが餌とする小魚が減っている可能性がある。「タイセイヨウニシン、イカナゴ、メルルーサなど、パフィンが常食としていた魚が減り、メーン湾ではまれだった魚が多くなりました」とライオンズ氏は話す。例えば、バターフィッシュ(イボダイの仲間)やラフスカッド(タイセイヨウマアジ)といった亜熱帯性の魚が見られるようになった。これは、パフィンにとって厳しい状況になりつつあることを示している。

 ライオンズ氏によれば、バターフィッシュは体高(背中から腹部まで)があるので、ヒナはうまく飲みこむことができない。その結果、親鳥が十分に餌を持ち帰っているにもかかわらず、巣穴には食べ残した魚が散乱し、ヒナは餓死することさえある。また、ラフスカッドなどは「形状は問題ないのですが、あまり栄養豊富ではありません。カロリー密度が低いのです」と氏は説明する。

気候変動でメーン湾の海水温が上昇するにつれて、パフィンの常食であるメルルーサやニシンが減少している。写真のパフィンがヒナに運んでいるのは亜熱帯性のバターフィッシュだが、胴が平たいので、ヒナが飲みこむのは難しい。(PHPOTOGRAPH BY BRIAN SKERRY)
気候変動でメーン湾の海水温が上昇するにつれて、パフィンの常食であるメルルーサやニシンが減少している。写真のパフィンがヒナに運んでいるのは亜熱帯性のバターフィッシュだが、胴が平たいので、ヒナが飲みこむのは難しい。(PHPOTOGRAPH BY BRIAN SKERRY)
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