コウモリをも食べる肉食コウモリ「チスイコウモリモドキ」

中米の熱帯雨林で調査、「めったに捕まらない」レアなコウモリ

2021.12.19
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【動画】コウモリを食べるコウモリ、チスイコウモリモドキ

「彼らはめったに捕まらないため、私たちは彼らのことをあまり知りません」と語るのは、米自然史博物館の主任学芸員ナンシー・シモンズ氏だ。シモンズ氏はカナダ、ウェスタン大学の名誉教授ブロック・フェントン氏とともに、年1度のコウモリ調査を主催している。調査の成果として、これまでに少なくとも60の科学論文が発表されている。

「チスイコウモリモドキは森を飛び回り、小さな脊椎動物を探しているのだと思います。何か物音がしたら、調べに行くという感じではないでしょうか」

 一般に、コウモリは昆虫や果物、花蜜を食べると考えられているが、2021年7月に学術誌「Mammal Review」に発表された論文で、チスイコウモリモドキはわずか9種しかいない肉食コウモリの一種であることがわかった。

 この研究では、ウーリーヘラコウモリ(Chrotopterus auritus)、カエルクイコウモリ(Trachops cirrhosus)を含む9種が生態系の頂点捕食者として、獲物の個体数をコントロールするなど、十分に評価されていないが重要な役割を担っていることが示されている。(参考記事:「珍しい肉食コウモリ、大きな爪で獲物捕らえる」「カエルを波紋で探知するコウモリ」

 チスイコウモリモドキはメキシコ南部からブラジルまで広く分布し、夜空を飛び回り、鳥をさらっていくほか、げっ歯類も捕まえる。

 この論文の共著者であるメキシコ大学の生態学者ロドリゴ・メデリン氏は「彼らは急降下し、翼を広げて獲物を包み込みます」と説明する。そして、ジャガーと同じように「獲物をかみ殺します。通常、頭頂部や首筋にかみ付きます」。メデリン氏はベリーズの調査には参加していない。

 ドラマチックな光景が思い浮かぶが、科学者でもめったに見ることができない。ほかの頂点捕食者がそうであるように、おそらくチスイコウモリモドキも生息密度が非常に低いためだ。捕食者は広い空間で狩りをするため、生息地の喪失は深刻な問題だ。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、チスイコウモリモドキは近危急種(near threatened)に分類されている。

「この森には5匹しかいない可能性があります。このメスと相手のオス、彼らの子供たちです」とインガラ氏は話す。この同じ森にはおそらく、さまざまな種のコウモリが何百、何千と暮らしている。

「チスイコウモリモドキは特別なコウモリなのです」とインガラ氏は言う。

少しずつ明かされる行動

 チスイコウモリモドキについて詳しく知るため、メデリン氏は母国メキシコで、チスイコウモリモドキのねぐらを見せてくれた人にその場で1000ドルを支払うことにしている。この報酬のおかげで、3つのねぐらに行き着いた。

次ページ:給餌や反響定位、徐々に明かされる行動

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