1万年前の女の赤ちゃんの墓を発見、欧州最古、手厚く埋葬

珍しくDNAが残存、赤ちゃんも「ひとりの人間として認められていた」と研究者

2021.12.17
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「私も、男女の赤ちゃんが平等に扱われていたことを示す証拠だと思います。これは、現代の男女平等の狩猟採集社会とも共通しています」。ペトラグリア氏は今回の研究には参加していないが、アフリカで発見された、ニーブよりもさらに古い年代の子どもの遺骨を研究した経験を持つ。こちらは、人類がヨーロッパに到達するよりもはるか以前の7万8000年前に埋葬されたものだった。(参考記事:「アフリカ最古のヒトの墓を発見、被葬者は子ども、7万8000年前」

 米国アラスカ州タナナバレーでも、ニーブと同時期の乳児の墓が発見されている。約1万1500年前にニーブとほぼ同じ月齢で死亡し、DNA分析により女の子だったことが確認されている。そして、こちらもやはり丁寧に埋葬され、同じように供え物が置かれていた。

 ホジキンス氏とオール氏はこれに関して論文の中で次のように書いている。「女児も含めた乳幼児をひとつの人格として認める考え方は、どの古代文化にも共通して深く根差していたであろうことを示している。あるいは、地球上の異なる集団の間でほぼ同時期に発生したのだろう」

見過ごされてきた「女性の物語」

 ホジキンス氏は、考古学が昔から男性のレンズだけを通して見られてきたため、女性に関する多くの物語が見過ごされてきた可能性があると指摘する。「贅沢に装飾が施された埋葬は、当然のように男性のものであるという思い込みがありました。男性には地位があり、女性にはないという西欧の既成概念に当てはめてきたからです」

 しかし最近の考古学調査で、女性のバイキング戦士や鉄器時代のノンバイナリー(男性や女性といった性自認を持たない人)のリーダー、青銅器時代の女性の支配者がいたことがわかってきた。「考古学に欠けているのは、女性の物語です」と、ホジキンス氏はいう。(参考記事:「有名なバイキング戦士、実は女性だった」

 ニーブの墓は、ヨーロッパで発見された最古の女児の赤ちゃんのものだが、ホジキンス氏は、「DNA分析が進めば、もっと多くの女性の遺骨が見つかるでしょう」と期待をにじませる。また、考古学の分野に進む女性がもっと増えれば、変化がもたらされるだろうと話す。「誰もが自分の狭いレンズを通してしか考古学的記録を見なかったら、あらゆる多様性を見逃してしまうかもしれません」

ネアンデルタール人と現生人類の両方が使った洞窟

[画像のクリックで拡大表示]

 ニーブの遺骨が見つかったイタリア北西部のアルマ・ベイラナ洞窟は、人類の進化を研究する科学者の間では有名な洞窟だ。2014年から始まった発掘調査によって、ネアンデルタール人と現生人類の両方がこの洞窟を使用していたことが明らかにされたためだ。

 4万4000年前まではネアンデルタール人が、そして3万年前からは初期の現生人類が使用していたとされる。つまり、洞窟の中に残された遺物や遺骨は、末期のネアンデルタール人から最初期の現生人類への移行期を記録したものということになる。科学者たちは、この時期のことについて、もっと詳しく知りたいと望んでいる。(参考記事:「アフリカ人にもネアンデルタール人DNA、定説覆す」

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