1万年前の女の赤ちゃんの墓を発見、欧州最古、手厚く埋葬

珍しくDNAが残存、赤ちゃんも「ひとりの人間として認められていた」と研究者

2021.12.17
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ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーであるジェイミー・ホジキンス氏率いる考古学者のチームは、イタリア北西部の洞窟で1万年前の乳児の墓を調査している。DNA分析により、「ニーブ」と名付けられたこの乳児は、死後、丁寧に埋葬されていたことが明らかになった。(PHOTOGRAPH COURTESY JAMIE HODGKINS, PHD, CU DENVER)
ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーであるジェイミー・ホジキンス氏率いる考古学者のチームは、イタリア北西部の洞窟で1万年前の乳児の墓を調査している。DNA分析により、「ニーブ」と名付けられたこの乳児は、死後、丁寧に埋葬されていたことが明らかになった。(PHOTOGRAPH COURTESY JAMIE HODGKINS, PHD, CU DENVER)
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 イタリアの洞窟で幼い子どもの骨が見つかり、分析の結果、ヨーロッパで埋葬された女の子の赤ちゃんとしては、最も古いものであることが明らかになった。古代の社会において、赤ちゃんがどのような存在だったのか、特に女の子の赤ちゃんの「人格」はどう扱われていたのかを知る手がかりになりそうだ。論文は12月14日付で学術誌「Scientific Reports」に発表された。

 女の子は、この地域を流れる川の名にちなんで「ニーブ」と名付けられた。1万年あまり前に、生後わずか40~50日で死亡した。死因は不明で、発見されたのは布に包まれたわずかばかりの小さな骨と貝殻のビーズだけだった。すぐそばで出土したワシミミズクのかぎ爪は、供え物として置かれたものと思われる。

 古代の子どもの骨が発見されることはめったにない。新生児の骨となればなおさらだ。子どもの骨は小さくてもろいため、数千年もの間、形を保つことができない。加えて、子どもの遺骨が見つかったとしても、骨に含まれたDNAが劣化しているため、普通は性別を判別できない。その点、ニーブの遺骨は例外だった。1万年以上も地中に埋もれながら、分析ができるだけのDNAが含まれていたのだ。

「この時代、つまり1万1000年から1万年前の墓は非常に少ないです」。しかもここまで古いと、使用できるDNAが残っている骨はほとんどない。「ほぼ何もない空白の期間なのです」と、論文の筆頭著者で、米コロラド大学デンバー校の古人類学・考古学准教授であるジェイミー・ホジキンス氏は言う。氏は、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探究者)でもある。

赤ちゃんはどのような存在だったのか

 DNAが残っていることは重要だ。そのおかげで、ニーブは女の子と判明した。民族誌学的には、幼い子どもの人間性を完全には認めない文化は多いとされる。だが、丁寧な埋葬は、女の赤ちゃん、そして恐らくは男の赤ちゃんもこの集団社会の中で「人格」を持ち、生まれた時から社会の一員として認められていたことを示していると、研究者たちは指摘する。

「小さな女の子の赤ちゃんまでも、社会のなかでひとりの人間として認められていたことを示しています」と話すのは、論文の共著者で、ホジキンス氏の夫でもあるコロラド大学デンバー校の古人類学者ケイリー・オール氏だ。

 古代の子どもの遺骨がこれまでほとんど見つかっていないこともあって、赤ちゃんがいつごろから個人とみなされていたのか、また女児が男児と同じように扱われていたかを知るのは難しい。しかし、ドイツのイエナにあるマックス・プランク人類史科学研究所のマイケル・ペトラグリア氏も、研究チームの解釈は妥当だと考えている。

次ページ:見過ごされてきた「女性の物語」

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