古代ローマの様子がありのまま、世界遺産メリダの遺跡群

三大競技建築物から貴重なモザイク画まで、スペイン南部

2021.12.28
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【動画】古代ローマの基礎知識
1000年以上にわたって続いた古代ローマは、常に進化を続けていた。この偉大な帝国は、革新と征服した土地の多様な文化の採用によって繁栄した。古代文明の栄枯盛衰と、今日まで残るその影響力について学ぼう。(解説は英語です)

古代と現代が出会う場所

 人口も観光客も少ないメリダでは、見どころとなる古代の建造物の発掘は比較的容易に行われてきた。「ローマに行けば、現代の地面の高さと古代のそれとは10メートルほどの差があります。メリダではその半分もありません。新しい光ファイバーケーブルの敷設のために溝を掘るだけで、ローマの遺跡にぶつかることもあります」と、カナダ、ヨーク大学のローマ史と古典学の教授ジョナサン・エドモンドソン氏は言う。

 旅行者はメリダ市内で、ローマ時代のものからキリスト教のものまで、30以上の歴史的建造物に出会える。これらはすべて、メリダモニュメント都市協会によって管理されている。

国立ローマ博物館の壁や床を飾る、狩猟の場面が描かれたモザイク画は、近隣の古代の住宅から持ってきたもの。(PHOTOGRAPH BY EDUARDO ESTELLEZ, ALAMY STOCK PHOTO)
国立ローマ博物館の壁や床を飾る、狩猟の場面が描かれたモザイク画は、近隣の古代の住宅から持ってきたもの。(PHOTOGRAPH BY EDUARDO ESTELLEZ, ALAMY STOCK PHOTO)

 最近、公開が再開された「円形闘技場の住居跡」は、街で最大の古代の住居跡であり、裕福なローマ人の生活ぶりを垣間見ることができる。住居跡の上に、新たに広さ約370平方メートルのスチール製の通路が通され、廊下や住居スペースの上部には床がガラス張りになったデッキが設置されている。さらには屋根も取り付けられ、エストレマドゥーラの強い日差しから遺跡を守っている。

「円形闘技場の住居跡は、アウグスタ・エメリタの城壁の周囲に点在していたローマ時代の郊外住宅の中でも、とりわけ特徴あるもののひとつです」。建築家のマリア・ロペス氏とともに修復を監督したメリダモニュメント都市協会のラクエル・ノダール・ベセラ氏はそう述べている。

 メリダ最大のローマ時代の住居であるここには、広さ650平方メートルに及ぶ色褪せたモザイク画がある。神々、自然、日常生活などをモチーフとし、特に保存状態が良いのはダイニングルームの床を覆っているもので、生い茂る植物に囲まれたビーナスとキューピッドや、ブドウを踏む三人の男と蔓をついばむ小鳥たちが描かれている。

「円形闘技場の住居跡」のダイニングルームに残る、保存状態の良いビーナスとキューピッドのモザイク画。(PHOTOGRAPH BY AGE OF STOCK, ALAMY STOCK PHOTO)
「円形闘技場の住居跡」のダイニングルームに残る、保存状態の良いビーナスとキューピッドのモザイク画。(PHOTOGRAPH BY AGE OF STOCK, ALAMY STOCK PHOTO)

 こうした石のモザイク画は単なる飾り以上の意味を持っており、この場所にはだれが住んでいたのか、彼らはどんな人たちだったのかについての手がかりを与えてくれる。

「円形闘技場の住居跡」から800メートルほど離れた「ミトレオの家」には、鮮やかな色彩の「宇宙モザイク」があり、神話上の人物を用いて天、地、海の世界と、そこにある風や水などの自然の力を表している。「ここからは、この家の持ち主が非常に興味深い知的好奇心を持っていたことがうかがえます」とエドモンドソン氏は言う。

 そのすぐ近くにある円形闘技場とローマ劇場も、驚くほど保存状態が良い。円形闘技場では石造りのベンチが、年月を経てところどころ崩れてはいるものの、剣闘士たちが戦った闘技場を囲むように設置されている。

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